- 2007年07月20日(金) 金の髪した若い王は黙したまま玉座に座している。対峙するのは黒髪の武将だ。戦場が磨き上げた屈強な背と肩を持っている。 「言わぬ」 2人ぎりいないがらんとした夜の広間に王の言葉が落ちた。豪奢な背もたれに預けた王の背には疲労があり、眉のあたりには憂いが漂っていた。 「言わぬ」王は重ねて言い、続けた。「言うてもせんなきことゆえ」 「申しませぬ」少しの沈黙のあとで武将が答えた。武将は立っており、片手を剣の柄に気楽に置いていた。「申してもせんなきことゆえに」 「見よ」王が言った。「予は城ぞ。これより堅固な城もあるまい。予はこの城のうちに住む。この城こそは穿ちえぬ。この城こそは破りえぬ」 「さよう」武将は答えた。そして手を伸ばし、王の手をとった。王の手をとり、引き寄せてその指先に口づけした。口づけして言った。 「この城こそは破り得ませぬ。しかるがゆえ内に住むものは出ることかないませぬ。しあれば囚われ人も同然、刑期のない虜囚も同然」 その瞬間、ふたつの目の光はわずかに出逢った。一対の鋼の刃のかっつと音たてて出合い、しなりつつかすかに軋むよう。 「この血の流れを聞け」王は言った。「高貴の骨より生じ、世々に王家に継ぎ継がれてまいった血ぞ。いかにもおろそかにはできぬ」 「さよう」武将は言った。「まことに尊き流れ。注ぐべき海を持たぬ砂漠の川さながら高みの極み、またそのごとき貧しさの極み」 (ねむ) -
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