- 2007年07月17日(火) 王は黙っていた。王の沈黙は狼のそれであった。砂漠はその右手にまた左手に渦を巻き、天を突く砂丘の群れはどうどうと東風に崩れていった。押し黙り続ける王に代わってその国土こそが狂おしくのたうち、身もだえし、吠えねばならぬとでもいうようであった。 砂漠の黒い木、王の旗印たる黒い旗はたなびき、翻った。王はわずかに頭を傾げて眼差しを彼方になげうち、茫漠たる砂漠はその視線を黙って受け止めた。しかしながら王は知ってもいた。煙る地平線の彼方には蝗のごとき大軍が潜み、いまこの瞬間にも征服と略奪を槍の穂先にかざして歩み来たりつつある。 -
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