終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2007年04月23日(月)

Spread your wings:

(おまえの翼を広げろ、飛んでゆけ。
 おまえは自由だろう、それこそが自由だ)

 フレディ・マーキュリーがざらついた声で歌い上げている。それは問いかけてくるようだ。本当に飛べるのかと。本当に飛びたいのかと。おまえは自由に耐えられるのか、その重さに耐え続けられるのかと。
 けれど本当は、とジョン・ディーコンは目を閉じて考える。真夜中のスタジオで古いアルバムを鳴らすのが最近のかれの日課になっていた。かれは考える。けれど本当は、なにひとつ前置きを伴ってはやってこない。問われることもない。ただ押しつけられるだけだ。そしてそれに耐えられるか、耐えられないか。ただそれだけのことだ。運命は勝者と敗者とを峻別していく。そしてかれは敗者だった。ありあまる富と愛する家族にもかかわらず。
 だが実際は、ジョン・ディーコンはわからない。かれが何に敗れたのか。かれが何に勝ちたかったのか。どうありたかったのか。何が足りないのか。しかもそれがわからない限り負け犬になるほかない。負け犬であるほかない。負け犬であり続けるほかない。
「…」
 ジョン・ディーコンは手の中のベースを撫でる。それはかつてかれの歌をうたい出した。あるいは正確にいえばその四半分を。人間の声ほど剥き出しのものはないと言ったひとがあったが、その楽器もまたそのようなものとしてフレディ・マーキュリーの声、とブライアン・メイのギター、ロジャー・テイラーのドラムスと親しく溶け合い、分かちがたく高鳴った。
 だがそれももう昔のことだ。あの高揚は過ぎ去った。もうどこにもない。ただその記憶だけ、あまりにも鮮明な記憶だけを残して。記録された亡霊のようなレコードだけを残して。耳にすればありありと思い出は蘇るのに。


(寝る)


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