終わらざる日々...太郎飴

 

 

葬列:2 - 2006年08月12日(土)

 一般弔問の始まった午後三時、エイトはサヴェッラを出た。暗殺者が誰なのか、おおよそわかっているような気はしたが、その理由と所在についてはかいもく見当はつかなかった。エイトは城壁を出て、街を省みた。
 黒に装って天空の館に入ってゆく人々の列は連ねた数珠のようだ。エイトは胸の悲嘆を確かめるように心臓の上に手を置いた。かれはもうわかっていた。歳月はかれを置き去りにして通り過ぎてゆく。あと幾度、こうして愛する人々を見送ることになるのだろう? それはエイトがククールの死体を前にして不意に慄然として感じざるをえなかった感慨であった。
 ニノとトロデ王、そしてククールは去った。残った人々もやがては行く。ゼシカもヤンガスも、そうだ、ミーティアも。そのことに思い至ってエイトは心臓をえぐられるような苦痛に打ち震えた。逝ってしまう。あの穏やかな幸福な気配がどこにもなくなる日が来る。あの声が。あの微笑が。
 年月がかれに影を落とさないと知ったとき、ミーティアは何も言わなかった。それとももううすうす感づいていて、改めて考えてみるほどのことではなかったのかもしれない。いずれにせよ彼女は何も言わず、そのときはエイトも深く考えることはよしたのだ。
「今は、その時じゃない」
 エイトは呟いた。今は。そして歩き始めた。行く先は定めなかった。死を思ったとき、それはおのずと明らかになったからだ。望むと望まざるとに関わらず、失ったものはその航跡をたずねずにはいないだろう。ならば。
「マイエラへ」
 エイトは呟いた。呪文はかれを運んだ。かすかな光に包まれて飛行しつつエイトは苦く思う。すべての葬列がこの足元を通り抜けていく。


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