終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2006年08月06日(日)

世界はゆっくりと滅びていく。
僕にはわかっている。


これはアポカリプスだ。


でも誰が考えただろう。
最初から終わりまで、すっかり2000年もかかるなんてことを。
ほんとうに、神様は気が長い。


 21世紀になって10年たたない年だった。僕はその年、中学校3年生で、高校受験のことよりも、終わってしまった野球部のことを考えていた。もちろん高校生になっても野球は続けるつもりだったけれど、それは少しもこの暗澹たる気分をすくい上げてはくれなかった。死んだ母親は遺影の向こうでこんなふがいない僕を笑っていた。
「おい、トキオ」
 座敷で宿題を広げていたら、縁側から、すだれをくぐってユキオが顔を出した。こいつは下手くそ以外に言いようのない中堅手だった。僕に言わせればこいつなんか、陸上部に入ればよかったのだ。背走してボールにおいついて、そのくせ必ず落とすんだから。最後の試合のときだってそうだ。それで同点の走者に続いて逆転の走者もかえって、サヨナラだった。俺はマウンドの上で、呆然として、ユキオが転がるボールを必死で追いかけるのを見ているしかできなかった。くそ、思い出すだけで腹が立つ。
「午前中は勉強してるから来るなって言ってるだろ」
「春日中が負けたって」
 僕はぎくりとした。春日は僕たちが負けた当の相手で、県代表として全国大会にも出たのだ。
「何回戦」
「三回戦だってさ。けっこうやるよな」
「へえ」
 ユキオが縁側から立ち上がった。そのまま帰るのだろうと思ったが、そうではなかった。ユキオは俺を見て、ニヤっと笑った。
「キャッチボール、しようぜ」
「なんで」
「ボールに触りてえんだ」
 グラブとボールは親父が親の敵みたいに乱暴に押し込んだ物入れにあるはずだった。僕はしばらく考えて、しまいに頷いた。


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