終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2006年04月15日(土)

ハルピュイア:

 食卓に敷布は整えられて、簡素な皿に盛られた空豆のスープと黒い堅いパンがのせられていた。ククールは黙って手と口を動かして食事を進めていたが、ふいに顔を上げた。向かいの兄は膝に手をのせたまま窓の外を見ている。テーブルの上は手つかずのままだ。スープも、パンも。さじを持ち上げた気配さえない。
 ククールは黙って兄を見た。軟禁された館の窓の外を見る眼差しは静かで、表情は何もない。床を離れてはじめて取った食事は口にあわなかったのだろうか、それとも自分がここにいては食事をする気も起きないのだろうかと思うと、ククールはふいに空腹がどこかへ消えたのを感じた。うつむいて、スープに映る影を見る。
「どうした」
 問いかけは、さほど間をおかずに落ちてきた。ひどく、さりげなく。おだやかに。
「食べないのか?」
「あ、……ン、うん」
 のろのろと、さじを取り上げた。さじはひどく重いようだ。スープ皿の底を何度かつついてから、ククールはやっとの思いで顔を上げた。思いがけないことに、マルチェロの眼差しはまっすぐにこちらを見て、ゆがんだところがない。
「あの、さ…」
 場違いに泣きそうな気分が立ち上ってくる。どうやらそれをこらえて、瞬きする。できるだけ軽口のように言えたらと。
「まずい、かもしれないけどさ…食べてみて、くれたら。もしかしたら」
 だんだん言葉は低く小さくなって、尻すぼみに消えてしまった。マルチェロはまだじっとククールを見て、それから膝の上に置いていた手を持ち上げてさじを取った。ククールはかたずを飲んで、そのさじがスープをくぐり、少しの豆のかけらを掬い、口元に運ぶのを見ていた。ほとんど音もなく、マルチェロはひとさじのスープを飲み干した。
「おまえが作ったのか」
「ああ」
「懐かしい味がする」
 ククールは少し笑った。マルチェロもかすかに笑い、だが再びさじを取り上げようとはしなかった。ククールはひどくつらく、声にもならない声で短くわびの言葉をつぶやくと、食卓を去った。マルチェロは。

 マルチェロは弟の背を黙って見送った。すまなく思いはしたが、だがどうしても、さじを取る気にもパンを裂く気にもなれなかった。マルチェロは食卓を見渡し、音もなく息をつく。幽閉の身の囚人のために、白い敷布を用意し、マイエラの昼食にしばしば出されたスープを用意した弟の心はわかっていた。
「だが」
 マルチェロはつぶやいた。
「だが、私の食卓には常に翼ある影がつきまとっている」
 そうだ、それは時ならぬ夕暮れのように押し寄せて、あらゆる喜びを押し殺した。その影とは悔恨であり悲嘆であり、我がために失われたものたちの怨嗟であった。そうだ、自ら殺した法王の喉のこごった悲鳴や、政敵の胸を突き通した剣の向こうに流れた血は速い翼を持つかのごとく前触れもなく手に目に耳にとりついた。ひとたびそうなれば離れはせず。
「……」
 それでも、この静かな食卓に臨んでつかの間感じた幸いは本当であった。もうスープは喉を通らぬだろうと知りながら、マルチェロはまだしばらく、席を立たなかった。




成分分析

(1)オフライン向け同人ペンネーム「たつみ」
たつみの52%は犠牲で出来ています
たつみの39%は蛇の抜け殻で出来ています
たつみの3%はお菓子で出来ています
たつみの3%は心の壁で出来ています
たつみの3%は知識で出来ています


(2)キャラチャ用HN「パンダマニア」
パンダマニアの85%は汗と涙(化 合物)で出来ています
パンダマニアの10%は鍛錬で出来ています
パンダマニアの3%はお菓子で出来ています
パンダマニアの2%は心の壁で出来ています


(3)ドラクエ、トールキンワールド用HN「太郎飴」
太郎飴の75%は大人の都合で出来ています
太郎飴の9%は黒インクで出来ています
太郎飴の7%は気の迷いで出来ています
太郎飴の6%は濃硫酸で出来ています
太郎飴の3%は言葉で出来ています


(4)本名
●の73%は知識で出来ています
●の23%は魂の炎で出来ています
●の2%は気の迷いで出来ています
●の1%はマイナスイオンで出来ています
●の1%は濃硫酸で出来ています



一番ネタになるのは52%犠牲の「たつみ」か?
それとも75%大人の都合の「太郎飴」か?
本名は割に納得。フィルムとかレンズがあればもっとよかったのに(笑)


-



 

 

 

 

ndex
past  next

Mail
エンピツ