終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2006年03月22日(水)

 ククールは知っていた。思い知らされるだろうと知っていた。 それでもそこにいるのは、そうしているのは、ただ抑えがたい望みのせいだ。
 団長室は暗く、明かりはといえば窓の外、カーテンの細いすきまからこぼれ入る淡い希薄な水のような月光だけだ。床の青い敷き布の上を横切って、寝台にかかっている。その上に散る銀の髪を輝かせている。そうだ、白銀に真珠と蛋白石と月長石をあしらった優美な鎖のように。では音は。

 音は寝台のきしみ。喉からこぼれるあえぎと、淫靡な行為のそれ。

 ククールは寝台に這って、我が身を背後から貫く熱のあまりの熱さに身もだえし、のがれようとして果たせなかった。腰を抑える騎士団長の強い手のために。ククールはすすり泣いた。
 行為は、ククールがおそらくそうだろうと予期していた通りに始まった。いたわりの言葉も、むつごともなく。予期していなかったのは、自身がどれほど兄を恋い慕い、飢え乾くほどに求めていたかということだ。
 うつぶせに押し伏せられて、背に指を添えられただけで、体が芯から震えた。重なる体にすでに渦に引き込まれるような喜びに怯え、自ら準備を整えたそこにあてがわれたものの直裁な熱さに悲鳴じみた声を上げた。

 体のうちを行き来する熱い剛いものが与えるあまりの感動に、ククールはもはや身動きもならなかった。触れられもせぬものはとうに吐精を果たしたのに、鋭くなりすぎた神経が与える恐ろしいほどの喜びは少しも減らない。

 体はもう、熱そのものになってしまったようだ。力は少しも入らず、尻だけを高くあげてうずくまり、突き上げられるつどに大きく震えるばかり。頬には涙が、背には汗が伝って止まない。助けてほしいとさえ叫びたかった。
 そうだ、叫んでいただろう、それがけっしてもたらされぬと知ってさえいなかったら。この狂乱の時間にあってさえ、ククールは、いまこの身を貫いている男、血を分けた兄、聖堂騎士団の長についてよく知りすぎ、しかもそれを忘れることがない。
 いつしか身内を突く熱、寝台に押さえつける男の身体は、海の波のごとくまた天の果てから吹き寄せ来る風のごとく定かならぬ力となって、ククールを押し包み、翻弄し、流し去る気配であった。こらえようもなく目を閉じる。

「……たあいもない」
 激しい律動を小さなこわばりで終えたマルチェロは、まだ我が身を抜き去りもしないままに、ぐったりと力なく伏せた弟の背を見下ろした。感じやすい体は行為も半ばのうちに絶え入ってしまった。かしいで見える横顔は目を閉じて恍惚としているのか、それとも苦痛にゆがんでいるのか。
 だが結局、それはどうでもいいことだった。情愛を抱くことのない騎士団長には、女であれ男であれ同衾を望むものは娼婦にほかならない。そうとも、どのような猫も夜には黒く見えるものだ。そして、ならば娼婦の様子を気遣うものもないものだ。マルチェロは身を起こした。
 情交のあとのけだるい気分が身のうちにある。ゆったりとした夜着を引き寄せて袖を通し、マルチェロは窓辺に立った。月は酷薄な一つの目のごとく、世界の背後の光の射す天窓のごとく。
 マルチェロはしばらくそうして立ち、少しして、し残した用事を思い出して執務机の前に戻るまで身じろぎもしなかった。そしてまた、むき出しの肌で横たわり声もなく忍び泣く弟のことを思い出しもしなかった。




ちっともエロくないエロでした。
こんなにエロくないエロがかってあっただろうか。うーん、ないかも。

20日の続き。コメントくださったかたありがとう。
でももう寝よう。おへんじ明日でいいですか?


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