- 2005年06月25日(土) 「夜の湿気と風がさびしくいりまじり 松ややなぎの林はくろく そらには暗い業の花びらがいっぱいで わたくしは神々の名を録したことから はげしく寒く震えてゐる」 『業の花びら』宮沢賢治 顔を覆い、木の下闇のくらがりを行く詩人を思うとき、 どうしてこんなにもものぐるおしく、また悲しいのか。 この幻視のなかに道はなく、仰ぐ空は黒また闇。 そこに無数の交錯しつつ舞い下りしかも落ちきることのない業が その花びらが満ちている。 業を花びらと視た詩人の目の諦観。 神々の名を知るものの恐れの深さ。 しかもあなたはそこにいなければならないのだ。そこに。生きて。 早朝に涼しい風が吹き、八幡山の斜面に生える、緑の木々が。 揺れている。手招くようにか。ああそんなふうにも言える。 葉裏の白さ、揺れ動く枝葉。 その枯葉に覆われた地面には、静かに灯りが灯ったようだ。 業はわたしにはあんまりあたりまえなものだが、 あるいはそれを、花とみる力がいるのかもしれない。花びらと。 -
|
|