- 2005年06月17日(金) 「あなたは歌う」 強いて竪琴を持たされて、カランシアは細い声で歌い始めた。 「マグロール、あなたは歌う。 あなたの思いは歌となってあふれ、コルマレンの緑の野を渡ってゆく。 聞くものすべてがあなたを愛する。 わたしはあなたを愛する」 頼りない調べが終わり、カランシアは兄を見上げた。マグロールは微笑して弟の方に手を伸ばし、黒髪に飾られた幼い頭をやさしく撫でた。 ほっとしたようにカランシアは笑って、兄に竪琴を返そうと差し出した。 「わたしは、桂冠詩人に歌を贈るには役者不足です」 「いいや」 マグロールが言った。 「おまえの歌は、長上王の月桂冠に勝って私の誉れだ」 カランシアは困って兄を見上げた。それはあまりに過ぎた言葉、むしろ不敬とも取られかねない言葉ではないか。だがマグロールは動じもしない。軽やかな仕草で弟の手から竪琴を取って、膝に乗せた。 「さあ、私の歌を聞かせよう。おまえのためにうたう歌だ」 そして歌い始めた。それは冠を勝ち取った歌よりも美しかった。 -
|
|