- 2005年03月06日(日) 祈り(マルチェロ): 神よ、私と私の罪はわかちがたく結びついています。 行くところすべて影のごとく私の罪は私に従い、 善悪を問わずすべての行為と思索は罪につながれています。 私は他者の血をして我が躓きの石と呼ぶ傲慢を拒むものです。 その取り返しのつかぬ悲嘆を通らねばならぬという救いを望まぬものです。 しかし許しを得ていましばし、この世界に留まりたいと願う、 その理由もまた、私はこの手のうちに持っているのです。 ああ、神よ。 誇りを捨て去り、心よりあなたに祈ります。 貧困と困窮に幼かった私を残して逝かざるをえぬことを哀しんだ母を、 孤児であった私を慈しみ育てこの額に惜しみなく祝福を注いだ老人を、 罪ある私のために夜毎祈る言葉を捜すこの半血の弟の想いを、 どうか神よ、哀れみたまえ。 我がゆえにあらず、ただこのまことある人々のゆえに、 神よ、この罪ある手に慈悲を垂れたまえ。 対話: ククールは兄の座る寝台の脇の椅子にかけて、古びた祈祷書の項をめくる。それがここのところ、兄弟の眠りの前の習慣となっていた。 「そりゃ、あんたが朝の祈りを好きなのは知ってるけどよ、今は夜だぜ?」 「いいだろう、別に」 「そうだけどよ、たまには終末聖歌にしないか?」 「おまえの好みだろう、それは」 「いいだろ、別に」 「いや、だめだ」 「なんでだ」 マルチェロが微笑した。ククールは結局のところ、兄には弱い。唇を尖らせて譲歩し、祈りの召集歌を代案として提案する。兄は同意し、先に立って韻律豊かな祈祷を詠み始めた。全ての祈りを暗記しているマルチェロには祈祷書は必要ない。文面を追うククールの方がよほどおぼつかなく聞こえる。 「なあ、兄貴。へんな話だが、俺たち、就寝の祈りを唱えたことはないな」 「そういえばそうだな」 「あんたも提案しないし、俺もしようって言わない」 「そうだな」 「もうほとんどの祈りは一緒に唱えたのに」 「どうしてだ?」 「そりゃね、俺は寝る前には一人で祈る必要があるんだよ」 「奇遇だな、私もだ」 「何を祈ってる?」 「おまえはどうだ?」 「言わないさ」 「私もだ」 祈り(ククール): どうか神様、お願いです。ああ、お願いです。 兄貴を取り上げないでください。行かせないでください。 この手で俺はたくさんのことをしました。 そん中にはいいこともあったはずです。 もしほんの少しでもあんたの心にかなったことがあったら、 どうかあいつを許してください。 他にはなんにも、俺はいらない。 あいつが犯した罪が大きすぎるというのなら、 その半分は俺のせいだから、俺にまわしてください。 そんだけです。そんだけです、神様。 あんた、俺らの両親も院長のじいさんも救ってくれなかったんだから、 これっくらい聞いてくれたっていいだろ。あ、今のうそ、うそ。 聞いてください。お願いです。 -
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