- 2005年02月23日(水) ククールは知っている。捕らえようとするこの手に対し、兄の背は常に遠ざかる。届いたと思った瞬間にさえ、そうだ。そしてただ絶望するには、ひととき味わった幸いはあまりに大きい。 「行かねばならない」 朝が来たというように穏やかに淡々と、マルチェロが言った。緑柱石の瞳に陰はなく、ただ透き通るほどに誠実だ。憎しみという陰をなくした兄の、この痛ましいほどの強さはどうだ。あの最初の邂逅においておぼろげに予感した優しさと誠実さと静謐な強さ。だが自身の予見の正しさを喜ぶには、このときククールの思いはあまりにも苦痛に満ちている。 「……行かせやしないさ」 裁判や拷問や絞首刑の方へ行くのを、どうして許せるだろうか。悪と破壊に向かって行くのを許せなかったのと同じことだ。手を伸ばしてその頬に触れる。その体を抱く。振り払われることはない。だが。 「わかっているはずだ」 静かな声音が厳しく告げた。見上げれば、緑の瞳がのぞきこんでくる。 「聞こえないのか? 流された血の償いを求める叫びがサヴェッラから私を呼んでいる。この罪はあがなわれねばならぬ」 「だめだ、兄貴。だめだ」 「おまえの手を振り払うことはしない。だが私はいずれ行く」 「行かせやしないさ」 ククールは言った。マルチェロは黙した。だがククールは胸のうちに言う。行かせはしないと。そのためなら、なんだってするだろう。 兄弟…! ぐるぐる回転は変わっていないようです。 マルチェロは自閉状態から抜け出したようですが経緯がわかりません。 ククールは兄が戻ってきて黒くなった…。 -
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