- 2005年01月22日(土) ―恩寵なるや。 マルチェロは一分の隙もない。少なくともククールの見る限りはそうであった。武芸に秀で学問に長じ、それゆえ誰にも一目置かれかつ傲岸不遜。燃え盛る炎さながら頭を掲げて歩む様子は辺りを払い、善悪を超越した抗いがたさがあった。 オディロは早い時期からマルチェロの中の高慢を危惧していた。しかし自身が親代わりをつとめた少年の才能と勝ち取った華々しい人望はこのお人よしの老人にとって大いなる喜びであり、背中を押してやろうと思わせるものでもあったろう。あるいは最初にククールが耳にしたとおり、オディロは時が解決する―すべて起きねばならぬことは起き、だがのちにすべては良くなる―とのある種冷厳とさえいえる哲学から沈黙を守り助力を請われれば与えたのであろうか。 いずれにせよマルチェロは騎士団の幹部候補としてサヴェッラでの研修を終え、ゴルドへの巡礼を果たし、次期騎士団長としてマイエラに戻って今は実権の半ばを握る。一方ククールは騎士団の末席に加えられこそしたが、真面目に勤める気はなく与えられた日々を酒と女に紛らわす以外に気晴らしを見出せない。 馬車は行く。ああそれで、と、ククールは考える。俺は何を待っているんだろう。根城の洞窟の奥に行き付けなかった伝説の島への海図を隠した海賊は何を待っていたんだろう。銀髪の尖った耳の月の眷属はあの不思議な空間で何を待っていたんだろう。待っているんだろう。ああ海が砂漠に変わるまで長い長い時を陸地に過ごし続けた船は。邪悪を血をもて封じられた杖は。異世界を行く鳥は。 ああ誰もが何かを待っていた。待っている。そうしてそれがなにかわかっていないものも少なくないはずだ。ならば俺は。―ならば俺は。マルチェロ、俺は何を待っているんだ。あんたが死ぬ日をか。その日には俺はきっと泣けようから。それともほかの何かか。あんたが笑みをたたえて振りかえってくれる日をか。そんな日にはきっと、俺はどうしていいのかわかるまい。だから生きている。 石の家は夕暮れを迎えている。崩れかけた窓から入りこむ光は長く伸びた。すべての光が荘厳さを感じさせるのはなぜなのか。マルチェロはそこに立っている。燃え盛っていた炎はとうに消えた。翡翠の目はうつろに開かれ、乱れた髪は頬に落ちている。待っていたことはもう起きたのではないのかと、ククールは考える。なるほどあれほど多くのことが起きたのだ、その中にはククールが待っていたことも混じっていたのかもしれなかった。ただそれが何だったかわからないだけ。 兄貴、と、ククールは呼ぶ。マルチェロには聞こえない。ククールは声を出しては呼ばないからだ。マルチェロは影のごとく石の家を横切り、扉から出て立ち去った。残されたククールはまだ生きている。黙って。 だめだろう、もう…。 同じところをぐるっぐる回ってます。もうだめだろう。 とりあえず進展しない兄弟だから。兄は廃人、弟は優柔不断。 コミュニケーション不全の永遠旋律を基調に果てしなく沈む。 しずさん助けて! それでもってなぜ雪国かっていうと宇都宮が寒いからだ!コンチクショー! 日課は毎日マルチェロ狩り(ヲイ)。ええそうですストックしてますセーブデータ。 -
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