終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2004年10月16日(土)

そして再び、夜。

 奇妙なことに、私はまた海に向かおうとしている。
 電車の窓から鉛色の秋の海が見える。海鳴りは聞こえない。先ほどから断続的に弱い雨が降って、窓ガラスに水滴を散らしている。私は海に向かっている。
 海というのは奇妙な場所だ。私はずいぶん昔、真夏の海を訪れたことがある。晴れ渡った日の海はまったく翳りなく、果てしない水涛は静謐で、輝きは尖った宝石に似ていた。この世が生まれた日もこのようではなかったかという感慨さえ起こさせる風景だった。そのとき私はそこでしばらく泣いたのだった。真夏の海は人気がなく、私の涙を見る者はなかった。もし誰かが近くを通りがかっても、誰も気付かなかっただろう。私自身でさえもそのときは自分が泣いていたことを知らなかった。自分が泣いていたということは。おそらく、私にとって泣くということは常に過去形として知るほかないことなのだ。それは涙を伴わない。
 それで、どこまで話したろう。列車の中だ。秋の日中、臨海線に人はまばらだ。この車両に乗っているのは私一人、隣の車両には中ほどに人がいるようだがよくは見えない。こんな季節に海を目指す人間も少ない。


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