終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2003年11月27日(木)

 闇の中だった。深い闇の中だった。地底の水路は網の目のように張り巡らされ、一匹の魚にすぎない●●●がどれだけ焦っても、光に至ることはできないかと思われた。水はときには氷のように冷たかった。ときには地底から発する熱と硫黄の臭気で鰓をつまらせるかと思った。何度か強い流れに巻きこまれ、そのつど鱗を剥がれる痛みとともに錐揉みになって押し流された。もう●●●は自分がどこにいるのかさえわからなかった。闇よりほかに何も知らなかったように思えた。魚でなかったことなどなかったと思えていた。
 震えながらようやく尾びれを動かし、●●●はわずかに前進した。その瞬間だった。縄を解くように周囲の冷たさが薄れ、そして鰓にもう忘れかけていた潮の香を感じ取った。●●●は狂ったように体をくねらせた。歓喜なのか絶望なのかさえ区別のつかない狂おしさに身悶えるよう体を震わせた。
 突如として闇が切れた。●●●は言葉にならない叫びを上げ、盲いるとも閉じまいと見開いた目ではるか水面に揺れる太陽を見上げた。太陽は緑がかって揺らめき、光は頼りなく揺れる細い筋となって●●●の傷つき血を流す体を照らした。それは●●●の見る最初の太陽だった。同時に最後の太陽ともなった。
 ●●●の死骸はあるかなきかの深海の流れに揺られ、腹を上にゆっくりと海面へと上っていった。白い巨きな腹にはゆらぐ光が柔らかい波紋を描いては滑るように流れていった。


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