終わらざる日々...太郎飴

 

 

グレン・グールドのバッハ - 2003年04月17日(木)

音楽とその亡霊。

1:
グレン・グールドは『歌う』。
それは鍵盤を経て紡ぎ出されるものだけではなく、
その残響も含む――つまりは歌だ。

彼のアルバムは聞くものによっては耐え難い。
つまり彼がピアノを演奏しながら歌うからだ。
澄んだピアノの響きには、亡霊のように彼の声がついてくる。


2:
私はおよそ音楽については素人だが、
しかし彼の演奏を聞いていると無闇に苦しい心持になると言ってもいいだろう。
そう言ってもしったかぶりをしているということにはならないだろう。
およそ耳のある人間なら必ず気付くからだ。

その残響、その亡霊は。

指先が奏でる純粋な音、美しい音の影だ。
人間がその全身を振り絞って人間以上の音色、調べ、美を創り出すそのとき、
置き去りにされた肉体の発する倍音なのだ。



3:
グレン・グールド、バッハを弾いてこのうえなき名手。
彼は肉体を置き去りにしてこの世を置き去りにして、
別世界にあった。つまりは音楽に。その導く彼方に。

だが顧みられることなくとも肉体はそこに存在し、
人間は肉体を通すことなく世界に触れることはできず、
そして魂と技能のすべてが別世界を目指すとき、

――影がそこに生まれる。


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