終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2002年09月15日(日)

善意と人間社会の軋轢(んな大層な)

1:
と、ある日の夕方のことだった。
私は外回りから戻ってきて、社に上がったのだった。

社ではその日の泊まりのH先輩(女性)が仕事中。
H先輩は上品でのほほん。
服はたいていちょいお洒落カジュアル、化粧は薄め。
かわいいと言われるタイプである。

「お久しぶりです」などと、外回りの多いものらしく挨拶し。
ふと見ると、先輩のズボンの裾が汚れていたのである。

「あ、先輩、ズボン……」

泥かなにかが、ズボンの後ろの方にべったりと。
あまりシャレにならない汚れ方である。
泊まりだから当然明日も穿くズボンであろう。

「あら、困ったわ」

と、先輩。
私はふと、先日の泊まりのときうっかり置きっぱなしで帰ってた、
自分のズボンがキャビネットにあったのを思い出し。

「私のズボンでよければ貸しますよ」

と、申し出たのである。
先輩と私ではかなり身長差はあるが、
そう極端に胴回りは変わらない。
私はハイヒール履かない分だけ裾短くしてるし。

「どうぞ」

と差し出したズボンを先輩が穿くと、案の定。
多少長めだが、なんとか、入っている。

「ありがとう。洗って返すわ」

いつでもいいですよ、と、私は答え。
そして夜の仕事に出たのである。


2:
それが、一週間ほど前。
そして、今日。


3:
泊まり業務の日なので、早くから社にいた世間は三連休最終日(ふ)

仕事が一段落して息をついていると。
――電話が鳴った。

「あ、先輩」

件のH先輩である。
いつもの上品な声で、このあいだはありがとう、と、おっしゃる。

「借りたズボン、洗ってあなたのキャビネに入れておいたから」

なごやかな会話の後、要件をすませ、
再度、このあいだは本当にありがとうね、と、おっしゃり、電話は切れた。

私は立って、キャビネットを開け……

「……」

不吉な予感がしたのは、小さな袋を見たときだった。
いかにも上品なH先輩らしく、
ミニチュアダックスの絵の入った袋だ。

だがいかんせん、小さい。

衣服を入れる袋は、皺をできるだけつけないために、
そこそこ大きくなるのが、普通である……。

袋を開けた。

「……」

洗濯機で洗ったとおぼしき、私の黒いズボンが、入っていた。
ああ、私の……

私のコムサ・デ・モードッ!!(瀧涙)




……先輩、まさかドライクリーニング知らないんじゃあ……


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