- 2002年08月27日(火) 魔界に住む男。 1: 殺人者の視界を、私はときに思い浮かべてみる。 この手のナイフを振り上げる、振り下ろす。 悲鳴と肉の裂ける感触。骨につきあたったとさえ知れるだろう。 悲鳴と血と恐怖。 幾創もの傷を与えて殺すものは、弱虫なのだと聞いたことがある。 立ちあがらないで欲しいばかりに飽かず刃を振り下ろす。 ならばおまえはどれほどか恐ろしかったのだ。 2: 愛したもの、近しいものを殺し、また殺し。 怯え、恐れ、怒り、穢れ。 逃れるのか。逃れうるのか。 続く数日は確かに魔界であったろう。 そして再び出ることはないのか。 おまえは酔ったような目をしていた。獣の目だ。 3: 起訴状を読んでいて、不思議に思ったことがある。 男はほとんど顔を狙っていない。 だいたいが胴を滅多刺しだ。 (惨いことだ) 顔を狙わないのは、顔を傷つけないのは。 なぜなのか。 男は「彼ら」の最も「彼ら」らしい部分、顔を狙わなかった。 人間には確かに「人間」を殺すことはできないのか。 「人間」と知りつつ、その最も「人間的な」部分を切り裂くことは。 -
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