- 2002年01月20日(日) 壊れた時計 以前京都に行ったときに、壊れた時計を買った。 いつ時を止めたのか、大正時代の年号を刻まれた銀の懐中時計。 これはいつなのだろう。この針のさしているのは、いったいいつなのだろう。 私は時計を買ったのではない。 止まった時間を買った。過去のいつかの時刻を買った。 使い道は? あるわけがない。 使うために買ったのではない。 ただ私は――あらゆるものがただわけもなく零れてゆくその中で、 たった一つ、もうすでにない時刻を抱きしめた―― その時刻に属する――数兆数億の秒の中のひとつだけを抱きしめた―― その愛情深い存在を買ったのである。 いつまでも止まっておいで。いつまでも。 けっして特別ではないその瞬間を、おまえだけは抱きしめている。 こぼすことなく抱きしめている。忘れることもできず、癒えることもできず。 壊れた時計、ああ、私はおまえが愛しい。 -
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