終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2001年11月10日(土)

Man in the mirror.

1:
あなたの前の私と、あなたの前の私とでは、
おそらくまるで異なる。
振るまいも、表情も、言葉も、なにもかも。

これをあなたは、奇妙なこととはしないでしょう。

TPOなる言葉は便利、
そうとも、友達といるときと仕事仲間といるときと、
まるきり同じように振舞うわけにはいかない。

あなたはこれを、奇妙なこととはしないでしょう?


……だが私は、奇妙なこととするのです。


2:
「死の後に自分自身をそれと見分け得るだろうか?
 そのようななにものか、永遠性を人間は持つだろうか?」
             キェルケゴール『死に至る病』


永遠を問うひとがいる。神と生と死を問うひとがいる。
私はも少しつつましく、現在にその問いを移し返そう。


――私のすべての局面に渡って、
  紛れもなく私と見分けえるなにものか、
  統一的ななにものか、すなわち『私』自体は存在するのか?――


3:
私は思考する。
思案する。

記憶、は、連続している。
だが私はあたかも複数の人間であるかのように見える。――振りかえれば。
私は断片の集積に過ぎないのだろうか?

私は一つの主体ではなく、
私は一つの人格ではなく、
ただ単に――


幾つかの『性格』と『記憶』の集積に過ぎないのだろうか?


それは焼けつく問いだ。
「私などいない」と認めたいものがいるだろうか?
論理的な帰結がそのように示したとしたら?


いいや、私はいる。


私はここにいる。――ここに!


4:
私の親友は私のある側面について証言するだろう。

――はい、彼女は私の高校時代の友人でした。
――はい、彼女はある種の本を読んでいました。
――はい、彼女はそのように語りました。

私の母は私のある側面について証言するだろう。

――はい、あの子は私の生んだ子供です。
――はい、あの子はそこへ行きました。
――はい、あの子はそうした食べ物を好み、そのように行動しました。

私の姉、私の父、私の悪友たち、私の弟、
彼らはそれぞれに証言するだろう。

それらの証言は膨大であり――
おそらく正確でさえあり、
しかもそれらは少しづつ齟齬するだろう。
そんなことをするはずがない、と、誰かの言うそのところのものが、
他の誰かの証言でまさに私がやっていたことだと証明されるだろう。
しかも誰一人間違っていないだろう。

そして。

それらの証言をすべて集めても、そこに私はいないだろう!
私の全局面についての証言を集めたとしてもだ!
私は相変わらずそこにはいないだろう。
私の魂はそのむなしい箱には宿らず、
誰も私を見なかったことが明らかになるだろう!


――私はどこにいるのか?誰が私を知るのか?私とは誰なのか?


5:
ならば私は私を知っているのだろうか?
だが、そもそもの始めから言われてはいなかったか?

そうだ、自分のことが一番わからない――

私の証言が一番支離滅裂だといわれることになるだろう。
そんなことはわかっている。
だが、わからないなら――

わかるようにするまでだ。

諦めるのは性に合わない、牙と爪を剥き出して吼えよう。
この問いがいかに巨大であろうとも、
私はただ進むだけだ。私はただ、殺すまで止めないだけだ。


わかるだろうか?


6:
ここに書きつけているのは、
すべての証言の真中にあいた穴、
私による私自身への洞察だ。


――血だらけの爪と牙。



(ああ、神を信じることができさえしたら!)


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