- 2001年09月12日(水) 第一回 詩(もどき) 1: なべてはかなきもの、鋭く薄く脆い硝子。夜の静寂のそのきらめく霜の針。 ――朝の光と共に失われゆくもの。 目覚めよと呼ぶ声、夜の明けゆくを告げよ。 目覚めよと、覆いを取り灯火を消せよと。 見よ、今や太陽は上り来る、創造当初の威容を誇り。 見よ、今や影は大地の随所に蹲り、老いたる王の如く己が敗北の時を知る。 なべてはかなきもの、夜のおぼろな夢。一切に先立ち大海に沈む夜の紫黒。 ――滅びをさだめとする多くの子ら。 目覚めよと呼ぶ声、祈りのとき至るを告げよ。 今こそ目覚めて祈りに座につけと告げよ。 見よ、今や夜は追われゆく、不義を犯した女の如く。 見よ、今や朝は槌、奔流ともなりて夜の滓を削りやる。 我が子よ、我が子よ、我が子よ。 聞け、汝らやがては滅ぶ。滅びはさだめ。 汝らやがては滅びて、来し方へぞ帰り行く。 (2001.01.17) 2: 大地よ、熱暑の大地よ。 一年は二つに分かたれる。 半ばは渇き、半ばは潤う。 半ばは死、半ばは生。 さながらハリ・ハラのごとし。 (2000.01.3) 3: わたしをいらないものを、わたしもいらない。 歪んでいるのは世界だ。 歪んでいるのは私だ。 わたしのいない、世界にゆきたい。 天と地の果てにたつひとへ、どうか教えて。 (1999.10?) 4: 大河は一つの巨大な時計であった。 海へ流れ出る水の全ての一滴は、落ちれば戻す術のない、時の量り手なのであった。 飽くことなく――限りなく辛抱強い終末は―― 時 を 量 る。 (1999?) 5: A 夜のしじまが轟き渡る 星の軌道が耳を聾する 夜の静寂の轟き渡る 星の軌道の耳を聾する B ここにはあらぬがさいわいの 夜のこごりの滴りの おとなきおとのきこえくる むおんのおとのやどりなる ゆめのはざまのそのはての 静かなるゆめのきこえくる C えんらいのしずけさ うみのかそけきちんもく ねむりのそこのよどみと めざめのうえのよどみと そのさかいのとどろき めざめはひとつのねむり ねむりはひとつのめざめ わたしはいない、どこにもいない わたしはいない、ここにはいない D おとなきおとのとどろき、わたしにつげる らくえんはとおく、 ちへいのむこうよりもとおく らくえんはちかく ひふとちとにくよりもちかく (1998?) -
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