渡会宗一郎
久しぶりに、教会に行った。
神父さんがいるかと思って訪れたが、
ちょうど留守のようだった。
代わりに……というかなんと言うか、
とても無口で、無表情のまま冗談を言う人だった。
……もしかしたら、狐かもしれない。
しばらくマリア像を見上げていたら、
渡瀬くんが来た。
子犬のユウタくんがようやく戻ってきて、
とても嬉しそうだった。
ユウタくんは一回り大きくなって、元気そうだった。
渡瀬くんも大きくならなきゃと言ったら、
2mくらいになるのだと言った。
それくらい大きくなったら気持ちいいだろうと
言うので、肩車をした。
それはよかったのだが……
渡瀬くんを心配してかユウタくんが足元を
ちょろちょろするので、うっかり尻尾を踏んでしまった。
気の毒に……びっくりしただろうし痛かったのだろう、
僕の足にがっぷり噛み付いた。
思わずこけてしまった。
もちろん、渡瀬くんごと……。
まあ、僕も渡瀬くんもユウタくんも怪我が
なかったから、よしとしよう……。
人を噛んだら叱らなければいけないのはわかるけど
飼い主をさしおいてついつい「おいで」と言ってしまう
僕はやっぱり、動物を飼うのにはむいてないに違いない……。
渡瀬君は、とても、いい子なのに。とても、強い子なのに。
……自分はそうじゃないと、思ってるようだ。
ほんの子供なのに、一人で生きながら、他人の心配もできる渡瀬くんが
どうして人の目に迷惑だと映ることがあるだろう。
そう言って、あげたかった。
(手帳。走り書き)
-