あふりかくじらノート
あふりかくじら



 オーロラの記憶。

ぼんやりと緑色の光を放つオーロラの写真が、
新聞に出ていた。
南極では最後の見ごろを迎えるころだという。

いつも写真で見るオーロラは、
ぼんやりして形が良くわからない。
なかなかうまく出てくれないし、
写真にも写ってくれないのだろう。

わたしの記憶に焼きついて離れないオーロラは、
雪の分厚く積もった真冬のアラスカのそれだ。
わたしはまだ中学校に入ったばかりの少女で、
アンカレジに暮らしていた。

オーロラの、まさに文字通り
風になびく巨大なカーテンのような
その緑色のひかりに、ただ圧倒されていた。

オーロラは、圧倒的だ。
あまりに巨大で、果てのほうから空を大胆に横切り、
ゆっくりと、ときに早く風になびくようなその姿。
恐ろしさというか、畏怖というか、
ともかく「おそろしい」という感情に支配されるそのときを
わたしは忘れることができない。
生き物のように、意思を持つもののように。

「きれい」ではない。
わたしの中にあったのは、「おそろしい」という感情だ。
そして、魅せられてしまう。動けなくなる。
耳が痛くなるくらい、雪の分厚く積もった
冷たい空気の中で、しんと静かなのに
なんだか轟音が波動と共に響いてくるような錯覚。

宇宙に浮かぶ巨大な磁石である地球なのだ。
地球というものがどんな形をしているのかを、
その巨大な光を見ていると意識させられる。

環境問題だとかを言う前に、まずオーロラの姿を
見たらいいのではないかと思う。
これで地球の存在が動物的にわかる。
生きていくことについて、考えさせられる。

オーロラを、甘く見ないほうがいいんだと思う。

わたしもいつか、またあの土地へ行って
少女のころの記憶をなぞってみたい。
今度は、何を思うだろう。

2004年10月05日(火)
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