あふりかくじらノート
あふりかくじら



 贅沢で素朴な文章ほど、かぐわしく。

ちいさな文庫本が、うつくしい人生の奇跡のように、
ささやかで輝かしい重みを持つ瞬間がある。

向田邦子の文章には、まったく贅肉がなく、
余計な色味も不要な感傷もなかった。
見事なくらい、さらりとした重みがあって、
ちょうどよい骨格に肉付けられていて、
身体中にいっぺんにぴったりと広がる
その無駄のなさは、じつに見事だ。

大人なのだ。
ちょうどよく、大人なのだ。
これぞ、エッセイストの真髄なのかもしれない。
目新しいことばづかいで読者をはっとさせる
江国香織があまりに若く見えてしまうくらい、
そこには、まったく違ったかぐわしさがある。

エッセイの第一文が、いつもとても印象的なのは、
わたしもこころがけようとしている大事な点。

このひとのエッセイに出会えてよかったと
心のそこから思える。

わたしの文章も、このように歳をとっていきたいものだと思う。

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『女の人差し指』向田邦子 著 文春文庫


2004年09月21日(火)
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