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■ 軽やかな自転車の女。
その女性は、いつも自転車に乗っていた。 実に軽やかに、小さな小さな身体よりも ずっと大きな自転車にふわっとまたがり、 まるで水面をすべる笹船のようだ。
同じマンションの上のほうに住んでおられる 小さな小さな「おばあさま」だ。 ふわふわとやわらかく真っ白な髪の毛、 小さく曲がった背中、折れそうな骨格、 しわだらけの穏やかな顔はしかし、眼光が鋭い。
毎晩、図書館が8時に閉館すると、 帰宅するわたしとこれからでかける彼女が マンションの玄関ですれ違う。 毎晩、きっちり決まった時間にお出かけなさる。 スーパーがしまる直前、買い物に行くのだ。
一人暮らしなのだろうか、名前も知らない。 でも彼女はわたしの名前を憶えようと必ずこう声をかける。 「あら、十三階のナガサキさんね」 わたしは答える。 「あ、いえ、ちがいます。九階の・・・です」 いつも同じひとに間違えられるのだ。 そして彼女はいつも謝りながらこう言う。 「あら、ごめんなさいね。お二人とも美人でいらっしゃるから」
何度もこのようなやり取りが続いていると、 ときには、彼女自身間違いを予測していることもある。 第一声がこういう場合もあるのだ。 「あら、ひとちがい、かしらねぇ、美人だから、ほほ」 (すでに省略形)
そして自転車に乗って去る。 颯爽と去る。 颯爽、ということばがよく似合う。
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・ウェブサイトのトップページ更新。 ・しかもハーボットを入居させてみた。 ・メルマガ販促計画か。
2004年07月08日(木)
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