あふりかくじらノート
あふりかくじら



 軽やかな自転車の女。

その女性は、いつも自転車に乗っていた。
実に軽やかに、小さな小さな身体よりも
ずっと大きな自転車にふわっとまたがり、
まるで水面をすべる笹船のようだ。

同じマンションの上のほうに住んでおられる
小さな小さな「おばあさま」だ。
ふわふわとやわらかく真っ白な髪の毛、
小さく曲がった背中、折れそうな骨格、
しわだらけの穏やかな顔はしかし、眼光が鋭い。

毎晩、図書館が8時に閉館すると、
帰宅するわたしとこれからでかける彼女が
マンションの玄関ですれ違う。
毎晩、きっちり決まった時間にお出かけなさる。
スーパーがしまる直前、買い物に行くのだ。

一人暮らしなのだろうか、名前も知らない。
でも彼女はわたしの名前を憶えようと必ずこう声をかける。
「あら、十三階のナガサキさんね」
わたしは答える。
「あ、いえ、ちがいます。九階の・・・です」
いつも同じひとに間違えられるのだ。
そして彼女はいつも謝りながらこう言う。
「あら、ごめんなさいね。お二人とも美人でいらっしゃるから」

何度もこのようなやり取りが続いていると、
ときには、彼女自身間違いを予測していることもある。
第一声がこういう場合もあるのだ。
「あら、ひとちがい、かしらねぇ、美人だから、ほほ」
(すでに省略形)

そして自転車に乗って去る。
颯爽と去る。
颯爽、ということばがよく似合う。


****************

・ウェブサイトのトップページ更新。
・しかもハーボットを入居させてみた。
・メルマガ販促計画か。


2004年07月08日(木)
初日 最新 目次 MAIL HOME

エンピツランキング投票ボタンです。投票ありがとう。

My追加


★『あふりかくじらの自由時間』ブログはこちら。★




Rupurara Moon 〜ルプララ・ムーン〜 ジンバブエのクラフトショップ



『あふりかくじらの自由時間』 を購読しませんか?
めろんぱん E-mail


【あふりかくじら★カフェ】 を購読しませんか?
めろんぱん E-mail


 iTunes Store(Japan)