あふりかくじらノート
あふりかくじら



 あふりかくじら的『私小説』

読み進んで行くにつれ、こんなにずっと継続して、
ある種、潜在的な意識レベルに内在していたものについて、
ぐんぐんと引き上げられるような感覚を
おぼえる本というのははじめてかもしれない。

こんなに苦しく、こんなに快感を覚え、
胸の底の方にたまっていたものを
突き刺した針の穴からすぅっと抜き出していく。
子どもみたいに、無力さに泣き出しそうになる。

水村美苗は12歳のときにアメリカに渡る。
以来、20年の時をアメリカで過ごしてしまった
精神性を語る。

わたしも、11歳でアメリカに渡った。
3年経たないうちに帰国することになってしまったけれど
あのとき感じたこと、太平洋の広さに打ちのめされたこと、
英語という言語、日本語という言語、
日本人という存在、アメリカという国、
地球という星にすむ人々の不平等。
それらを、わたしはずっとずっと、
胸に抱えて生きてきた。
今ここで、この本にすくい取ってもらうまで、
それらはあまりにも重たかった。

だからわたしも、やっと書きたいと思う。
16年経った今。

アラスカに暮らしたこと。
「くじら」の原点を。

**********もういちど****

水村美苗 著『私小説』新潮文庫


2004年03月05日(金)
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