ケイケイの映画日記
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2021年06月15日(火) 「Mr.ノーバディ」




あー、面白かった!前日「茜色に焼かれて」を観て、すごく良かったんですが、感想書くのに時間がかかりそうなので、本日見たこの作品から書きます。劇場鑑賞を再開してから、結構重く感受性を刺激される作品が続いたので、「ファーザー」と迷いましたが、感受性をクールダウンしたくて、この作品をチョイス。ラストのコニー・ニールセンの奥さんのセリフに拍手したかったけど、誰もしないので、こそこそ一人で手を打ちました(笑)。監督はイリヤ・ナイシュラー。

冴えない中年男のハッチ(ボブ・オデンカーク)。美しく良妻賢母の妻ベッカ(コニー・ニールセン)とは倦怠期、思春期の息子には疎まれ、幼い娘が懐いてくれているだけが家庭での居場所です。ある事でストレスを抱えたハッチは、バスを乗っ取りやりたい放題のチンピラ相手に格闘し、全員をKO。しかし、その中の一人がロシアンマフィアのユリアン(アレクセイ・セブリャコフ)の弟だったため、以降彼の身に危機また危機が訪れます。

冒頭の毎日のルーティーン場面に笑いました。毎回ゴミ出し間に合わないし、イケてない事この上ないのに、何故か身体は鍛えておる。これが伏線だったわけで。

強盗に一撃食らわさなかったのは、私も相手が女だからだと思っていましたが、一瞬で銃に球が入っていないのを確認したからと語る様子に、あぁ、ただのネズミじゃないのだなと。無線で誰かと語り合うのも、ハッチの背景に謎を呼びます。

仇討ちしたい相手に赤ちゃんがいて、上げた拳を下すも、ストレスマックスのハッチ。大立ち回りは、その発散だと思っていました。強いのは強いのですが、一発二発食らったあと、段々調子が上がる様子は、「久しぶり」だったので、エンジンかけ初めだったのだと、後で解ります。窒息で瀕死の相手に、気管切開してストローで気道を確保する様子に、あれ?と思いました。これ、「ER」でジョージ・クルーニー演じるロス先生が、似たような事していたのよね(その時は自分の胸に差していたボールペンの外側)。何者なの?後から思い起こせば、流れは一味工夫していました。

この事がユリアンの耳に入り、それからはお約束のアクションの嵐。バスの立ち回りは序章に過ぎず、強いのなんの。ハッチは「死して屍拾うもの無し系」では、アメリカでは、いや世界の頂点に立つ三文字の元凄腕。三文字としか言いません。解らない人は教えます(笑)。そこから足を洗った理由も哀愁を帯びています。再び覚醒していく様子は、元FBIだったハッチの父親(クリストファー・ロイド)も同じで、「これが忘れられない」と言い、目が爛々とするのな。

この三文字は、アメリカ映画ではプロットの宝庫。シリアスなら社会派ドラマに、エンタメならこの作品のよう殺戮系アクションやスパイもの。ユーモアたっぷりな所は「レッド」を思い出しました。古式ゆかしくロシアンマフィアが敵役と言うのは、昨今の世相に気を使ったのかと思います。中東とか中国なら洒落にならんし、ロシアはロシアでも、マフィアだしね。ユリアンのキャラは、時間の関係もあったでしょうが、もう少し極悪非道の方が良かったです。

主演のオデンカークは、「ストーリー・オブ・マイライフ」で、四人姉妹のお父さん役の人ですよね?あの時より、無精ひげ、傷だらけの今作の方が、男っぷり10倍アップ!トムちんと同じ年なので、後数年はアクションも大丈夫でしょう。リーアム・ニーソンみたいに、突如アラカンからアクション俳優に転向したのか?的な人もいるし、身体鍛えて頑張って欲しいです。

相変わらずニールセンは綺麗で、良妻賢母が似合いました。欧米は法律でもあるのか?と思う程、夫婦は狭いダブルベッドで眠りますが、夫婦の間に枕で仕切ってあるのは、初めて観た(笑)。嫌なら別室かツインにすりゃいいのに、枕と言うところが、微妙な夫婦の葛藤を見る思いでした(演出の芸が細かいね)。クリストファー・ロイドは、最初老けすぎていて解らなかったです。お茶目ではっちゃけていて、凄く良かった!「my son!」と叫ぶのを、字幕では「せがれ!」と訳していて、場面に合ったなかなか憎い訳で、気に入りました。

冒頭哀愁を帯びた「悲しき願い」(何回もリバイバルしているけど、私の若い時は、サンタ・エスメラルダが有名)が流れ、以降華麗なる殺戮場面に似合う往年の名曲も炸裂。「ジョン・ウィック」や「イコライザー」等、同じような設定の作品は多いですが、この作品もシリーズ化しそうなので、家族愛・夫婦愛で一味工夫をしてくれそうです。次があるなら、必ず観ます!






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