ケイケイの映画日記
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2020年05月05日(火) 「コンティジョン」




Amazonプライムで、やっと観ました。10年前の作品が、あまりに現在と酷似している事に、もうびっくり。コロナ渦の真っ只中の今観た方が、色々感じ入る作品です。監督はスティーブン・ソダーバーグ。

香港からの出張帰りのベス(グヴィネス・パルトロウ)は、ミネソタの自宅に向かわず、元恋人とシカゴで密会。その後自宅に戻るも、急な発熱後突然死亡。茫然とする夫のミッチ(マット・ディモン)。その後ベスの連れ子も急死。その時、日本・香港・ロンドンで、不審な病死が続発。WHOは調査に乗り出し、新種のウィルスを確認。しかし現在治療法もワクチンもなく、48時間後に世界にこのウィルスが蔓延すると、宣言します。

これ程急ではなくても、今年のお正月前後、新種の肺炎が中国で流行と聞こえた時は、まだまだ他人事でした。それが二月の中頃から、あれよあれよという間に世界中にコロナは蔓延。欧米各国はロックダウン。致死率や死に至るまでの経過に若干の差こそあれ、まるでコロナ蔓延の様子をなぞっているようです。

公開時なら、絵空事だったはずの「人は一日3000回顔を触る」「感染者の触ったグラスや扉からの感染」「ソーシャルディスタンスを守る」「手洗いとうがいを入念に」「外へは出るな」等々、今自分の置かれている状況では、身に沁みして理解できます。

お話は群像劇になっており、政治から鑑みる作りではありません。WHOの医療者や研究者(マリオン・コティヤール、ローレンス・フィッシュバーン、ケイト・ウィンスレット、ジェニファー・イーリー)の奮闘ぶりや、幸いにも抗体を持ったミッチが、妻の死を哀しむ暇もなく、思春期の娘を守る様子を軸に、市井の人々のひっ迫した混乱ぶりや暴動。そして政府の発表に懐疑的で、世間を煽るジャーナリスト(ジュウド・ロウ)も配しています。

これだけの面子、幾らでも嘯いたパニック映画に出来るはずが、華やかさは皆無。地道なドキュメントを観ているようで、殺伐でもなく、煽ることもしない乾いた世界観が展開され、恐怖を感じつつ冷静に観られる事に、とても感銘しました。

過剰な泣かせもないのに、私は三度涙ぐみ、それは全て女性でした。志半ばで感染し、悔しさを滲ませながら最後の最後まで感染者を気遣ったケイト・ウィンスレット。故郷の村を想い切羽詰まった中国の衛生部の者に拉致されながら、その村人を見捨てる事をしなかったマリオン・コティヤール。医師として老いた身で全線で治療し、感染して死の淵にいる父に報いるように、自らでワクチンの治験をしたジェニファー・イーリー。

医師として人として娘として、彼女たちは自分の仕事に誇りを持ち、最後まで相手に寄り添う。だから私の心は揺さぶられたのです。翻って、コロナ関係で多くの政治家の長ーい演説を聞いても、全く心に響かないのは、結局この人たち、自分の仕事に誇りを持っていないんだな。自我は強くとも自尊心は薄いのでしょう。

特筆すべきは、感染者や及び家族を誹謗中傷する描写が、無かった事。集団ヒステリーのような、自警団もなし。そして医療従事者に敬意を感じこそ、いたずらに忌み嫌い、村八分にする描写も、一切なかった事。これはアメリカにある認識なのかどうか、その辺はわかりませんが、見習いたいと思います。


映画ではジェニファーの勇気ある勇み足により、140日足らずでワクチンが出来ます。作品のその後は描かれていませんが、ミッチの娘と恋人の、二人だけのプロムのシーンに希望を託していました。若さは希望だと改めて痛感しました。

この作品で印象に残ったのは全て女性だったのに、今の日本で奮闘ぶりが伝わるのは、小池知事ばかり。他の市区町村でも女性はいるはずですが、何も報道されないのは、どうしてかしら?この作品を観て、その辺にも不満が出てきました。

今後緩やかに自粛は解除されていくでしょうが、ワクチンが出来るのはまだ先のはず。この作品を観て、改めて気を引き締めるのもいいかなと思います。ご覧になって下さい。


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