ケイケイの映画日記
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2017年11月09日(木) 「IT/イット “それ”が見えたら、終わり」




20年近く前だったでしょうか。この作品、前後編でNHKBSでドラマとして放送していました。当時の感想は、前編・神、後編・ゴミ(!!!)。前篇があんなに面白かったんだから、後編はどんなに面白いんだろうか?ワクワクワク。その思いを墓場まで持って行けば良かった、それが幸せって言うものよ!あぁぁぁぁ!見なければ良かったと、当時後編を見た事を、どれほど後悔したことか。原作のスティーブン・キングのファンなら、先刻ご承知だった事でしょう。なのに懲りずにまた観にいったのは、秀逸だった、前篇を映画化したと聞いたから。ダークな思春期の子供たちの姿に、上手くピエロ=ペニーワイズが溶け込み、スプラッタ物とは一味も二味も違う、思春期ホラーの秀作でした。監督はアンディ・ムスキエティ。

1988年。アメリカの片田舎のデリー。子供たちが神隠しにあったように行方不明になる事件が、多発していました。中学生のビルの弟ジョージーも行方不明に。一人で遊びに行かせた事に責任を感じるビルは、幻覚を観るようになります。彼の仲間のリッチー、スタン、エディも、実は幻覚に怯えているのですが、この幻覚は、大人には見えないのです。そこへ同級生では少し大人びたべバリー、転校生のベン、両親を火事で亡くしたマイクも加わり、幻覚に深く関わっているペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)の真相を突き止めようと、団結します。

この作品を観ていると、子供たちの毎日は輝いているとの思いは、大人だけだなと、それこそ幻覚なのだと感じます。学校では上級生から苛めに合い、家に帰れば親の抑圧、支配、肉体的・精神的な虐待と、この作品の子供たちの毎日は、痛みに苛まれている。街全体が、悪意に満ちている感じがして、育むと言う雰囲気がありません。

親に特に問題のなさそうなビルとて、自分たちが子供を亡くした事に嘆き悲しみ、弟を亡くし傷ついているビルへのフォローは全く無し。図書館で羨望の眼差しでビルたちを見るベンを、司書の年配女性は、「夏休みは子供は外で遊ぶものよ」と説教します。友達がいればね。

反面、友情・勇気・絆と言う、少年ジャンプ的な風景も盛り込み、更には幼い恋や性の芽生えまで映す。安息はなくても、「仲間」と言う居場所の重要さ。表裏一体の陰と陽の照らし方が、繊細です。

ペニーワイズの出し方も上手。怖がらせ方も、神出鬼没でオーソドックスですが、ドキリとします。子供が主役なのに、R15指定は、「キャリー」並みの血の描写か、背徳的な関係があるからでしょうか?幼い子には、ペニーワイズはトラウマ必死ですが、せめてR12にして、中学生にはビルたちを観てもらって、自分の力で租借して欲しかったなぁ。

ビル・スカルスガルドが真っ赤な唇が毒々しく、出色の出来。ドラマ版は怪優ティム・カリーが演じた役ですが、演じ手が若返っているので、当然若々しいペニーワイズでした(笑)。もうじきステランの息子、と言う付け足しは、要らなくなるかも。
べバリー役のソフィア・リリスも、バービー人形のようなキュートな容姿で、とてもチャーミング。きっとこれから、たくさん観られると思います。

エンディングで、第一章と出てきたので、やはり第二章も作られる模様。ゴミのパートです(笑)。オチは知っていますが、大人になったビルたちを観たいので(違う役者が演じるのだけど)、やっぱり見に行こうと思います。取りあえずは、子供たちの人生の一大事には、相談して貰えるような大人にならなくちゃと、強く思った第一章でした。







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