ケイケイの映画日記
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2017年11月04日(土) 「ゲット・アウト」




面白かった!これは拾い物でした。人種差別を描くと見せて、実は・・・、でもやっぱり!と言う作品。監督も黒人のジョーダン・ピール。

黒人の好青年クリス(ダニエル・カルーヤ)は、週末白人の恋人ローズ(アリソン・ウィリアムズ)の家族と一緒に過ごす事に。一抹の不安は、自分が黒人だと、ローズの家族は知らない事。しかしローズの両親のアーミテージ夫妻(ブラッドリー・ウィットフォード、キャスリン・キーナー)は、歓迎してくれ、弟ジェレミー(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)も加わります。それでも、黒人メイドや黒人管理人に不穏な空気を感じるクリス。翌日は、祖父の代からの白人ばかりの親睦会があり、そこでたった一人、黒人を見つけるクリスだったのですが・・・。

とにかくアーミテージ家に着いてから、観ていて居心地悪いのなんの。観たいのだけど、帰りたくなるような、ムズムズ感。これは、クリスの感情を体感しているのでしょう。差別と思えばそうだけど、考えすぎと言われれば、それまで。それがず〜と続くのですから、クリスも私も体に悪い。

母が精神科医と言うのが、不穏な怪しさをぬぐえない。キャスリン・キーナーなので、ますます怪しい(笑)。父も医師で、オバマ支持の、リベラルで知的な白人だと印象つけます。実はこれが、ポイントなのじゃないですかね?

父親のオバマを支持しているの発言は、本当なんでしょう。集まる白人たちも、身体的な黒人の能力の高さを羨望している。色々と配慮や尊重もしているつもり。そう、「尊重してやっている」のであって、対等ではないのです。感想は書いていませんが(残念!)、秀作「ドリーム」の中で、黒人部下のオクタヴィア・スペンサーに対し、散々な対応をしてきた白人のキルスティン・ダンストが、「誤解しないで。私は差別感はないのよ」と言うと、「知っています。あなたが、そう思い込んでいるのは」と、痛烈に返答したオクタヴィア。

知的でリベラルな白人たちの、自分たちも気付かない心の底を、デフォルメして描いていたのじゃ、ないかしら?こうでもしないと、気付かないでしょうね、「してやっているつもり」の白人には。それをホラー仕立てで描くのが、秀逸なアイディア。でも秀逸過ぎて、俺のことじゃないぜ、と思われるかも?(笑)。対するクリスは、お前の思い過ごしだよ的な差別を、怒りを飲み込み、笑顔で大人の対応で切り抜ける。この様子に、監督の多くの黒人を代弁する気持ちが、込められていたと思います。

冒頭の車に飛び込む鹿、意味不明の黒人メイドの涙など、びっくりさせたり、じわじわ気持ち悪くさせたり、禍々しいムード作りも上手い。クリスの友人の使い方もユーモラスで、不穏さを持続させながら一息つけます。ラストは最後までどちらに転ぶかわからず、固唾を呑みましたが、お陰様ですごい開放感でした。ピール監督、なかなか知的な才人のようです。


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