ケイケイの映画日記
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2016年05月23日(月) 「殿、利息でござる!」

評判良いので、観てきました。うん、確かに面白かったけど、絶賛する程かな?と言うのが、正直な感想。でも昨今騒がせている某知事の事など、本当にお上には腹が立つことばっかりなので、観客が溜飲下げて、爽快な気分になるのは、よーくわかる。それがヒットの要因では?監督は中村義洋。

江戸中期の仙台藩。貧しい宿場町吉岡宿は、藩からの厳しい重税に苦しみ、村人の夜逃げが続出していました。造り酒屋穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は、そんな苦しみを打破しようと、お上に訴えようとしますが、村一番の智恵者の菅原屋篤平治(瑛太)に、打ち首になるぞと止めに入られます。その後、とき(竹内結子)の居酒屋にて、ふと篤平治は、村中からお金を集め、それを藩に貸して利息を貰い、それを宿に還元すればよいと漏らします。前代未聞のアイディアに飛びついた十三郎は、早速町の商人たちを集めて、案を練ります。しかし金額は千両(約3億円)。さぁどうする?

このトンデモなアイディアは、実話なんですと。それを聞けば、色々ツッコむところも、まぁ有りよねぇと思ってしまう。宿の人々は200軒。そんな数なのに、商人たちは、よく今にして一軒三千万なんか出せたなぁと、びっくり。
私は中学から私立の女子校なのですが、当時高度成長に乗ったうちのような中小企業のオーナーの娘が一番多かったように思いますが、その子たちに交じって、酒屋さんや市場のお漬物屋さん、果物屋さんの子が同級生にわんさかいました。お商売って、一見地味なお店でも、そういうもんなのかも?

宿を治める肝煎(寺脇康文)には、てっきり断られると思っていたのに、夫婦して家財を売っても!と、この案件に大乗り気。これは遅くに生まれた息子のお蔭でしょう。負の遺産を子供に残したくないのですね。子を持って知る感情です。とってもよーくわかる。その上の大肝煎(千葉雄大)が話に乗ってくれたのは、それとは対照的に、まだ夢や希望を持ち、悪しき環境を変えて行こうと言う若さだと思いました。

この案件は誰にも話すな、末代まで秘密にして、決して人にひけらかすべからず。三億は大金です。壮大な世の中を良くする夢。支え合う仲間と何年もかかって、知恵を出し合いお金を作る様子に、この苦労は自分だけの欲なら、とうに諦めてしまっているだろうなと感じました。人って、本来は善で出来ているんだろうなぁと、信じたくなる。あっ、ここもヒットのポイントだ。

先代浅野屋(山崎努)の思いは、上記に通じるものです。たった一人でするには辛くて、家族や番頭たちにも啓蒙したのかも?言い続けたら、辞められませんもん。篤平治の妻は、「言いだしっぺがお手本になるものです!」と言いますが、浅野屋が一番そう思っていのでしょう。

現浅野屋甚内(妻夫木聡)や十三郎の息子の行動は、古臭いけど、親が清廉潔白なれば、子供は観ていて、親を助けてくれるのだと、感じました。その逆もまた真なり。そして世の中を変えていくのは、一代では難しく、次代を継ぐ人間を作る必要があるのだと思いました。ホロホロする場面はたくさんありましたが、私が本当に感動して涙したのは、十三郎の息子の件です。

ただ、一つだけ納得出来ないのは、十三郎が押さない時養子に出された件。いくら口が堅いのが家訓かも知れないけど、長男が養子に出されるのは、それなりに重大な理由が必要なはず。それを子供に何も教えず、養子に出すのは如何なものか?それがため、十三郎は傷つき、実家にコンプレックスを持っています。甚内とて、兄に申し訳なさを持ち続けている。

親が兄弟の仲を裂く事はいけません。そして7歳の時に養子に出たなら、弟の様子もわかるはず。教えないのは不自然です。ここが私の最大のツッコミです。

正しい心・行いは、曇った心も照らし動かすと言う事。但し私利私欲を捨て、強靭な心と行動力を持ちなさい、と言うお話。これがノンフィクションなら、少々鼻白む話ですが、実話はやっぱり、ずっしりと重い。そして善人がいっぱいのお話は、観ていて気持ちよく元気も出てくる。

あまり知られない江戸時代の制度も解り易く説明され、お勉強にもなります。
大傑作とかではないですが、ヒットするのは充分わかる作品です。


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