ケイケイの映画日記
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2014年06月22日(日) 「サード・パーソン」




ポール・ハギスの群像劇と言うので楽しみにしていました。余計な憶測したくないので、予告編で観る以外は何も頭に入れず観てにきたら、てっきり人間ドラマだと思っていたら、息苦しいメロドラマではないかと感じていたら、終盤に向けて、ミステリーだったんだ・・・と言う作品。大人な作品です。

パリ。デビュー作でピュリッツァー賞を受賞した作家マイケル(リーアム・ニーソン)ですが、今はスランプで書きたいものが見つかりません。彼の不倫相手のアンナ(オリヴィア・ワイルド)はゴシップ記者ですが、小説家を目指す野心家で、マイケルの他にも秘密の恋を抱えています。ニューヨーク。かつてはメロドラマの女優だったジュリア(ミラ・クニス)は、息子ジェシーの虐待を疑われ前衛芸術家の夫リック(ジェームズ・フランコ)と離婚。息子は夫に引き取られ、現在親権を争っています。ローマ。産業スパイもどきのいかがわしい仕事をしているスコット(エイドリアン・ブロディ)。アメリカを懐かしんで入ったカフェで、ロマ族の女性モニカ(モラン・アティアス)と出会い、彼女の娘の救出に巻き込まれて行きます。

三都市のお話が別々に構成され、それが少しずつ交錯し始め、やがて大きくうねりながら、終盤一気に繋がる構成となっています。

パリパートは、演出の巧みさで見入ってしまうのですが、正直オリヴィア演じるアンナが苦手で。こういうのを「こじらせ女子」と言うのでしょうか?愛する相手に素直になれず、意地を張ったり試したり誘ったり。そして鬱々泣く(笑)。いい加減にしろよ!とイライラ。リーアムは中年の渋さと包容力満点ながら、こんなに大変な若い娘に入れあげてる様子を見ると、あぁやっぱ男なんだと(笑)。そんな気持ちを救うのが、しっとりと私の心に訴える、マイケルの妻を演じるキム・ベイシンガーでした。

ニューヨークパートは、確かにミラに同情は出来る。しかし夫が家にいつかないくらいで、虐待を疑われる行為をするのは、如何なものか?母親としてひ弱すぎる。居つかないどころか多分夫の愛人サムは、その前から存在していたのでしょう。それでも私はやっぱり母親として脆いと言いたい。出産のため例え夫が望んだとして、女優のキャリアを捨てたのも、自分が決めた事でしょう?こんなはずじゃなかったとして、夫に裏切られたとして、それでも子供を懸命に育てている女性はいっぱいいますよ。しかし夫も、妻の行為には自分は一切責任ないと思っているんですね。だから妻は身ぐるみ剥がされ追い出され、一気に経済的に困窮しているんでしょう。これももう、腹立たしくて。お前だって悪いんだよ!だから子供が懐かないんだよ!夫婦は破綻するときは、必ず両方に非があること、子供が犠牲になるということは、よく表現出来ています。

予告編では一番期待していなかったローマパートが、私のイライラを劇的に救ってくれて、これは意外な誤算でした。エイドリアン・ブロディの哀愁の男気に、萌えてしまいました。いくら魅力的でも見ず知らずの女のため、こんな危ない橋を渡るのは何故か?彼くらいの男なら、詐欺だとも感じるはずなのに、これは何か理由があるんだと、そうまで感じさせてくれます。モニカを演ずるモラン・アティアスも、エキゾチックでミステリアスな魅力をふりまき、素敵でした。クールではない、情熱を秘めた苦さがあって、モニカの苦しみをよく感じさせます。

それが終盤になって、あのお話このお話が次々繋がっていきます。伏線はそれほど巧妙ではなく、多分目を凝らしていなくても、気がつくように作ってあるので、途中で気付く人もいるはず。そしてオーラスに向かい、えぇぇぇ!そうだったのか・・・と、驚愕しました。すっかり騙されました。

まぁ作家と言うのは、業が深いもんですよ。他者を傷つけても好奇心の湧く事柄は文章にしたい。そして自分の迷いや苦しみ、贖罪までそこに注ぎ込む
。そしてささやかな希望さえも。書くことでしか、「生」を実感出来ないのかもなぁ。昔亡くなった森瑤子の本を読んでいて、別の作家から「小説は根も葉もある嘘」と、教えられたと書かれていました。成る程なぁと、この映画を観てその言葉を思い出しました。マイケルの妻は、そんな夫の深い業を理解し、いつも見守っていたんでしょうね。

「携帯を壊してしまったの」「お前はあの男に、きっと傷つけられる」などの、何気ないけど後を引く言葉や、印象的な繰り返される「Watch me」、そして「白」。何かあると思いつつ、それでもすっかり騙されました。この答えの出ないグダグダ感、私は決して嫌いではありません。


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