ケイケイの映画日記
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2013年11月17日(日) 「悪の法則」




監督がリドリー・スコット、出演が今をときめくマイケル・ファスベンダーを筆頭に、ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム、キャメロン・ディアス、ブラッド・ピットと、錚々たる顔ぶれ。期待しないって方が無理でしょう?それがあなた、びっくりするほど、つまんないの(笑)。ツッコミ、説明不足、描き込み不足満載の作品。今回も寝落ちしそうになりました。あぁ!

ある有能な弁護士(マイケル・ファスベンダー)。美しい婚約者ローラ(ペネロペ・クルス)との新生活が待っています。新生活のため、ふとした出来心から、実業家のライナー(ハビエル・バルデム)と手を組み、闇のビジネスに手を出し、裏社会に通じるウェストリー(ブラッド・ピット)を紹介され、麻薬の密売に加担する事に。全て上手く事が運ぶはずだったのが、弁護士が国選で弁護した女性からの頼みを聞き入れた事から、事態は思わぬ方向に。それにはライナーの愛人マルキナ(キャメロン・ディアス)が噛んでいました。

だいたいどうしてマルキナが、影で糸を引くのかわからんのだよ。彼女はダンサー上がりで天涯孤独。子供の頃親に殺されそうになったとは、台詞でわかります。ビッチで危険な女だけど、男心を惹きつけてやまない、媚薬をふりまくような女性というのも、キャメやんの好演で、これも納得。だけど、何故愛人であるライナーを始め、顔見知りの何人もの命に関わる大それた事をするのか、全く不明。途中で神父に告解する場面があったけど、あれになんか意味があるのか?それとも「ワタシ、オカネダイスキヨ」のラスト?それでも不明だよ〜。

とにかく前半お話が動かないのが痛恨。哲学めいた会話を散りばめたり、マイケル×ペネロペのベッドシーン、キャメやんの車とのファックシーン(笑えますよ)とか、ちょこちょこエロっぽしシーンも折り込んでいますが、うーん、どれも中途半端。暴力シーンや死体処理の猟奇性、変態指数も中途半端。せっかくR15なのに、それを生かせていません。

後半バイカーの殺人場面から、ちょっとましに。しかし!あの殺し方、ありなんだろうか?夜半にライトで眩しくさせて事故を狙うってのはわかります。しかし真昼間から、ピアノ線を引っ張って待つってどうよ?バイクが来たのは夜ですよ。あの道、昼間は何時間も何も通らなかったの?首がちょん切れたのに、騙されてはいけない。

ライナーから「ローラはどうだ?」と聞かれ、「最高だ」と答える弁護士。「そうだろう!」と破顔一笑のライナー。もしかして、恋人はライナーのお下がりか?と想像したけど、それ以降絡みなし。マルキナはかつてライナーとウェストリーが共有する愛人だったみたいに描かれるけど、それも以降絡みなし。印象的なペットとして、チータが画面に出てきますが、成金の悪趣味ペットの域は出ないし、ウェストリーは裏社会哲学を朗々と語る割には、間抜けな事で墓穴を掘る。ライナーはヒュー・ヘフナーみたいな豪邸に住んで、プレイメイトみたいな露出過多の美女に囲まれているので、どんだけ大物なのかと思いきや、ボディガードもちゃんとつかない、全くの小物。どれもが全て、思わせぶりなだけ。それだけで終わって、全然肩透かしで、作品中で設定を拾えていません。

唯一金に目が眩み、何を根拠に安心しているのか、素人臭さ満開の弁護士のみ、意味がわかります。離婚経験ありらしいので、その慰謝料で身ぐるみ剥がされたのか?ローラとの新生活のための欲なのは理解出来ます。でもなぁ、ローラはプロポーズに涙ぐむような、外見の派手さに似合わぬ純粋な女性です。お金なんかなくっても、彼女となら幸せになれたのに。この顛末はとても皮肉です。

チョイ役で、ブルーノ・ガンツ、ジョン・レグイザモ、エドガー・ラミレス、ゴラン・ビシュニックが出演。映画好きには知られたメンツですが、これってサービスになるの?地味なんですが。私はガンツのみ嬉しかったです。「ER」ファンだったので、ゴランもね。

救いは出演者が総じて良かった事。特に女性陣が良かったです。キャメやんは今回出色の出来で、退廃的な魔性の女を、腐臭が香る寸前の美しさで熱演。だから余計マルキナの描き方が残念でした。ペネロペは悪女の深情け的情の濃さを感じさせる役が多いですが、今回一貫して婚約者を信じて付いて行く、清楚な女性です。意外とはまっていて、感心しました。

結局「素人が安易に裏社会に首を突っ込むと、痛い目に合うぞ」と言う、当たり前の事を、クドクドクドクド、持って回って見せられただけの作品。どうしたんだ、リドスコ!


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