ケイケイの映画日記
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2013年06月12日(水) 「ローマでアモーレ」

ここ数年、コンスタントにヨーロッパを舞台に新作を発表するウディ・アレン。今作は久々に自身も出演しています。四つのお話はそれぞれ独立していますが、オムニパス仕立てではなく、それぞれが交錯して描かれます。イタリアと言えば情熱。往年のビットリオ・デ・シーカやピエトロ・ジェルミに代表される艶笑小噺風の内容は、ユーモアたっぷり皮肉もたっぷり、とっても面白かったです。

ローマでイケメン弁護士と知り合い、結婚するという娘(アリソン・ピル)に会うため、ローマまで来た演出家のジェリー(ウディ・アレン)と精神科医のフィリス(ジュディ・デイビス)夫妻。娘の義父(ファビオ・アルミりアート)のすごい美声を聞き、ジェリーは仕事への欲がムクムク。平凡で冴えない中年のレオポルド(ロベルト・ベニーニ)は、突然セレブになった自分に訳がわからず・・・。アメリカ人青年ジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)は、恋人サリーの友人モニカ(エレン・ペイジ)と恋に落ち、新婚の若夫婦は、お堅い上流の親戚たちに会うため緊張の真っ只中。妻が美容院に行っている時、何故か手違いで娼婦のアンナ(ペネロペ・クルス)がやってきて、親戚たちは、アンナを妻だと思い込みます。

ここに書いてあるだけで、すんごい豪華キャストでしょ?この他ジャックパートには、狂言回し的にアレック・ボールドウィンも出演です。これだけ豪華だと胃もたれしそうなんだけど、アレンは余裕しゃくしゃく、飄々と演出しているので、とても軽妙です。何が偉いって、これだけの面々がほぼ自分のパートでは出ずっぱりで、キャラも背景も全然別々、きちんと描かれている事。影の薄い人が一人もいない。、尺にして111分、ひとつのお話が30分切っているのに、全部違う笑いで、でも同じ教訓を残します。

その教訓とは、「身の丈を知り、足るを知る事が人生には大事」です。そうすれば、幸せになれますよと言っているのに、一人だけ浮いた人を演じるのはアレン自身。アバンギャルド過ぎると言うより、突飛すぎて誰もついていけない演出ばかりして、才能があるのかないのかわからないけど、自信家で夢を追い掛け、家族を振り回してばかり。これがお茶目で実にチャーミングな爺さんなんです。その証拠に、困った顔ばかりする割には、妻も娘もジャックを愛しているのが、とてもわかる。自分は特別と言っているみたいで、なんかちょっとずるいなぁ〜。

ファビオ・アルミりアートは、本当にすごい美声と声量で、吹き替えなのかと思っていたら、本当のオペラ歌手さんなのでした。それがあんなシーン(爆笑ものなので、特に秘す)やってくれるなんて、素敵よね〜。男気がある!個人的には良い女優さんと思うけど、エレン・ペイジが魔性の女っつーのは、どうよ?と言う気がしますが、相手役が女の数は知りません風のジェシー君なら、エレンでも有りだなと感じるので、この辺のキャスティングもヒット。ジュディ・デイビスのクールなしわがれ声は、今回とっても温か味がありました。ちょこっとオルネラ・ムーティが大女優役で出てくるのも、嬉しかったです。

その他日本ではあまり知られないイタリアの俳優さんたちは、皆イケメンと美女で、トレビの泉や下町風景などなどと一緒に、とても良いイタリア案内になっています。こんなにソツなく作っているのに、それを感じさせないのが、すごーく品がいいです。豪華キャストが奏でる小品にして逸品。とにかく楽しいです。


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