ケイケイの映画日記
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2013年03月28日(木) 「シュガー・ラッシュ」(2D字幕版)




三回泣きました。春休み、お子様いっぱいの劇場で、おばちゃん一人で鑑賞です。子供達と同じところで笑い、同じところでドキドキし、そして同じところで泣けたはず。年齢によって違う感想でしょうが、刺激される感情は多分同じはず。これって凄い事ですよ。久々にディズニーの底力を見ました。

とあるゲームセンターの閉店後。ゲームのキャラクターたちはコンセントを通じて行き交い、交流していました。「フィックス・イット・フェリックス」の悪役キャラ・ラルフは、30年間悪役生活の自分に疑問を持ち、ヒーローになりたいと思い出します。金のメダルを持てれば、自分もヒーローになれると、ひょんな事から、シューティングゲーム「ヒーロー・デューティーズ」の兵士と入れ替わり、念願の金メダルを得ます。しかし帰る途中で、悪玉キャラの卵も一緒についてきてしまい、飛行船の操縦を誤ったため、またまた別のゲーム「シュガーラッシュ」へと侵入してしまいます。そこでバグキャラであるため、仲間外れにあっている9歳の女の子・ヴァネロペと出会います。

冒頭の「30年仕事がある事は有り難いが・・・」以下のラルフの独白には、30代以上の大人ならどっぷり共感するはず。職場や家庭がそれなりに安定していても、何か違うんだ、別の自分を目指したいと想う心は、人としての(ゲームキャラだけど)成長です。ラルフの場合は、ゲーム時間が終わっても、自分だけ疎外され、汚いゴミ溜めの家に押しやられるのですから、この自我の萌芽は当たり前。物凄く理解出来ます。縁の下の力持ちに対して、この仕打ちはないでしょう。独りヒーローキャラのフェリックスだけは、ラルフの本当の善良さを知っているようですが、他のキャラの手前、彼を庇う事はありません。これも学校や職場の苛めの構図に似ています。

悪役ゲームキャラ達が、集会を持っている設定が上手い。悪役の役割を確認し、誇りを持って仕事しようぜと誓う彼らですが、こうやってモチベーションを保っているのは明白です。だって爽やかで強くて、いつだって人気者のヒーローキャラは、集会なんてしないもん。

卵が孵化しては大変な事になると、「デューティーヒーローズ」からはカルホーン軍曹(美人の女性)が出動。フェリックスも責任を感じて、ラルフを探しに共に「シュガーラッシュ」へ。いつも怖そうな軍曹には、実は哀しい設定がプログラミングされていて、彼女は未だその痛みを引きずっていました。う〜ん、上手い!プログラミング=トラウマと解釈しても良いでしょう。過去の呪縛から解けない様子は、男勝りな彼女から、女性らしさを感じさせます。

勝気でお茶目なヴァネロペですが、不良品と言う事で、せっかくレーサーとしてプログラミングされているのにレースに出られず、事故を起こすと自分たちもバグされてしまうと、他のキャラ達から疎外されています。またしても苛め!人に嫌われる孤独を、いやと言う程知っているラルフが、ヴァネロペと友情を結ぶのに、時間はかかりません。

ラルフは壊し屋、フェリックスは直し屋としてプログラミングされているので、それはどのゲームに行っても一緒。限界があります。特に自分のゲームではヒーローであったはずのフェリックスが、「シュガーラッシュ」では、その力が何の役にも立たない事に注目しました。フェリックスは性格の良い明朗なキャラですが、彼を通じて「井の中の蛙」と言う言葉を連想しました。

しかし自分独りでは、その特性を上手く使い切れない彼らが、他者からの助言で、「他人の庭」でも存分に活躍出来る姿を観て下さい。成長するには、自分の力だけでは限界があると言う事ですね。もし自分だけで生きてきた、ここまでやってきたと思うなら、それは不遜な事なのです。

もう一人大事なキャラがキャンディ大王。ある大きな秘密を抱えた彼は、世の中で妬みや嫉妬ほど醜いものはないと、思い知らせてくれます。自分の強欲を満たすため、他者を陥れへいきで嘘をつく。その頭がありゃ、どんな素敵なヒーローキャラにもなれたのに。これも教訓でしょう。

シューティングゲームは、画面いっぱいに銃撃戦が繰り広げられ、ここだけ切り取ってお話が作れそうな迫力です。「シュガーラッシュ」の方は、画像のように、キュートでスウィート感が満載。しかしレースの場面は、あの「カーズ」を彷彿させる出来で、スリルがいっぱい。可愛いキャラや背景に頼ってはいません。

コンセントで行き交いする様子、バーで一杯ひっかけたり、本音を語るキャラ達の人間臭さに、思わず感情移入する方も多いでしょう。ラルフがいないとゲームが機能せず、焦りまくる「フィット・イット・フェリックス」の人々も、現実社会の縮図かも?いなくなって初めて、その人の重要性を認識するのですね。ここは自警を込めて見なければ。

壮大な「旅」をしたラルフが、何を考え何を学んだか?人生の辛さや苦さから逃げず、自分で消化し納得する彼に、思わず泣いてしまいました。もちろんディズニーですから、ラストはご安心あれ。可愛い絵柄ですが、男の子女の子、両方に向く作品です。ストリート・ファイター、パックマンなど、お馴染みキャラも大挙出演。仕事に疲れたお父さん達に是非観て欲しい作品です。あなたのヴァネロペは、毎日家であなたの帰りを待っているから。もちろん私のように、大人の一人鑑賞もお薦めです。


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