ケイケイの映画日記
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2013年03月17日(日) 「クラウド アトラス」



訳わかりませんが、取りあえず感動しました。

スケールは大きい作品です。
19世紀から24世紀までの長きを渡り、トム・ハンクスを始め13人の俳優たちが、人種や性別を越えて複数名の役柄をこなし、それぞれの時代を生きるお話。繋がりが悪く、きちんと後始末出来ていないプロットもちらほらありますが、叙情的なシーンが多く、イマジネーションの広がりを感じる作りは、鑑賞後「美しい」と言う感情を残します。監督はウォシャウスキー姉弟(そう、「兄」だったラリーは性転換して、姉ラナに!)と、トム・ティクバ。

ストーリー紹介はバラバラなので、今回なし。出演者はトム・ハンクス、ハル・ベリー、ヒュー・グラント、ジム・ブロードベント、スーザン・サランドン、ヒューゴ・ヴィーイング、ジム・スタージェス、ベン・ウィショー、ジェームズ・ダーシー、ペ・ドゥナ、ジョウ・シュン、キース・デヴィット、デヴィッド・ジャーシー。彼らが一人で何役もこなしています。

たくさんのパートが出てきますが、私は好きなパートはウィショー&ダーシーのゲイカップル、ペ・ドゥナ&スタージェスのクローンと革命家のカップル。ゲイカップルの方は、愛情が手紙を通じて表現されます。画面に直接は映らぬ、その心の美しい事!ある決意をしたウィショーが、ダーシーの姿を離れて見つめる様子など、絶望的な状況なのに、エレガントな幸福感に包まれています。その後の数十年、ウィショーを想うダーシーの物静かな様子にも心打たれます。ダーシーはもうじき公開の「ヒッチコック」で、アンソニー・パーキンス役で出演。あまりに似ているのでびっくりしましたが、先に見たこの作品の好演で、俄然彼に興味が湧いてきました。

クローン&革命家パートは、「私はウェイトレス用に作られたので、貴方たちの役には立てない」と言っていたソンミ(ペ・ドゥナ)が、開放を夢見て生きていたクローンたちの哀れな末路を見て、やがて自我に目覚める様子は、何度も見てきたはずのクローンやアンドロイドの心模様です。それでも描き方や演じる俳優の力量で、素直に感情が揺さぶられます。革命家チャン(ジム・スタージェス)との愛も、ぎこちないソンミの様子が初々しく、ソンミを命懸けで守ろうとするチャンの男らしさと相まって、とても清々しい気持ちになります。アクションの振り付けが「マトリックス」を思い起こさせ、これはウォシャウスキー姉弟が監督かな?ゲイカップルはティクバでしょう。

メイクの工夫は、すぐわかる人・えぇぇ!の人ありで、楽しめます。でも欧米人を韓国人にするメイクは、ちょっと無理がありました。みんなミスター・スポックみたい(笑)。ペ・ドゥナのアメリカ人に変身も、これも×。カラコンを入れてつけ鼻をしていますが、元々平べったい顔の彼女は、やはりアジアンチャーミングのようです。その点彫りの深いジョウ・シュンのアメリカ人は上手くはまっています。意外だったのは、ヒュー・グラント。人食い族の原住民メイクがとても似合っていて、びっくり。ラブコメキングのヒューですが、最近容色の劣化著しく、これからどうするべ?と心配していましたが、今作は全編ほぼ全て敵役で、女っけまるでなしですが、存在感は際立っていました。嫌味な策士なんか似合いそうで、生き残れそうです。

テーマは「輪廻転生」と「愛」だと思います。三時間の長きをあっち行ったりこっち行ったりしますが、最後の一時間で繋がるように仕上げています。上手く拾えないパートもありますが、それぞれのパートが面白く、映像も力強いので、退屈する暇はありません。鑑賞後は作品の欠点より、それぞれのパートの正義や愛を描く心が強く残り、それを集約すると「美しい」と言う気持ちになります。

近未来は「マッドマックス」で描かれる荒廃した風景は見慣れていますが、それを過ぎての世界は、文明のまるでない世界になっているのは、少々ショッキングでした。人類の英知を欲望が滅ぼした、的なセリフはとても納得感がありました。私たちの子孫が流浪の民にならないように、切に願いたいです。


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