ケイケイの映画日記
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2013年02月18日(月) 「レッド・ライト」

キリアン・マーフィーがビリングトップなのを観て、老いたりとは言え、ハリウッド重鎮とも言えるデ・ニーロやウィーバーの上を行く扱いに、彼も偉くなったと感心しました。思えば、これもヒントの作品。賛否両論で、特にオチで評価が分かれているようですが、私的には有りのオチでした。超能力の是非を問うたミステリー仕立てにしながら、人間の深層心理や孤独の形に言及した作品です。監督はロドリコ・コルテス。

マーガレット・マシスン博士(シガニー・ウィーバー)と助手のトム・バクリー博士(キリアン・マーフィー)は、大学で教鞭を取りながら、超自然現象や霊能力者たちのペテンを暴いてきました。ある日二人は、伝説の超能力者サイモン・シルバー(ロバート・デ・ニーロ)が、30年ぶりに復活すると耳にします。彼を調査すべきだと言うトムに、及び腰のマーガレット。過去の苦い経験が躊躇させていたのです。

冒頭「ヘルハウス」ばりの、暗闇の中でのオカルトチックな様子が描かれます。そして結論。講義での明快な説明より、この家族の背景を深く知ることに鍵があったのだなと、見終わった後わかりました。

どんなに真実を見たい知りたいと思っていても、人とは自分の見たいように見てしまう。そして思い込み。見終わって痛感するのはその事で、数々の場面が思い起こされます。

しかし大元の内容は良いのですが、その見せ方に少し疑問が。トイレの場面は設定を変えた方が良いし、トムが疑心暗鬼になり、神経を病む場面での盛り上げも、私的には不必要なシーンもあるように感じました。ペテンを解明する人の扱いも、唐突に出現してきます。だから流れが悪く、少々釈然としない部分もあり、この辺はもう少し練ってもらいたかったところです。

印象的だったのは、マーガレットの同僚博士(トビー・ジョーンズ)が、「君はその現象を暴いて、人に感謝されたか?」と言う言葉。人生において、人は何度か奇跡的、またはそれに近い体験があるものです。それらに意味を求めたいのは、唯物的な、目に見える物だけで生きる事が辛いからだと思います。心の目で見えるもの、それを支えに人生を送りたい、その切実な心が生むのだと思います。もちろん私もそう。それは希望や夢を抱かせるから。

数々の伏線が張ってあり、幸か不幸か、私が気になっていた事が当たり、オチについては落胆する事はありませんでした。それよりもシルバー追求に反対するマーガレットに、何故トムが執拗に抗議したのか理由がわかり、そこに深く感じりました。自分は世界でたった一人、それは恐ろしいほど孤独でしょう。繰り返す「自分を偽って生きてはいけない」の言葉。欲しくなかったものを持つ人の孤独は、たくさん映画に描かれますが、この作品には希望はありません。ハリウッドっぽくない陰鬱な描き方は、より効果的で私は好きです。

デ・ニーロの胡散臭い大物ぶりはセリフがなくても大丈夫なくらい、はまり役でした。ウィーバーも硬質の研究者は彼女の独壇場ですが、強気一辺倒ではなく弱さを見せる隙に、人間らしさを醸し出し好演。でもやっぱり一番はマーフィー。彼がトムを演じることで、下手すると際物になった作品が、繊細で深い感情を抱かせるミステリーとなったと思います。思いの他格調高い仕上がりになっており、鑑賞後色々自己問答出来て、私は好きな作品です。


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