ケイケイの映画日記
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2011年01月10日(月) 「アンストッパブル」

五度目となるトニスコ&デンゼル様のタッグ作品。今回若手のクリス・パインとツートップで共演です。何にも考えずに、暴走列車のパニック映画とだけで思って観に行きましたが、うちの三男、考えたら4月から鉄道会社に勤務なんですな。ほんの些細なミスから大惨事が起こるスクリーンを見つめつつ、改めて息子は、社会的責任の大きい職場に勤めるんだと身が引き締まりました。まっ、母が引き締まっても仕方ないんですが。一時間半ノンストップで、爽快に楽しめる作品です。

新米車掌のウィル(クリス・パイン)は、ちょっとしか諍いから、現在妻子と別居中。今日は勤続28年のベテラン機関士フランク(デンゼル・ワシントン)と組む予定。最初からソリが合わず、険悪な雰囲気で仕事を開始する二人ですが、他の操車場で運転士のミスから、最新型の大型貨物車が無人で走行していると言う知らせが入ります。貨物車は大量の化学燃料を積んでおり、転覆すれば大惨事は必至。ウィルとフランクは、それを阻止すべく自分達の乗る機関車と共に列車を逆走行させます。

老練な従業員はリストラ、経験が浅く安く雇える若手を登用はアメリカもいっしょみたいで、そこがウィルとフランクの間に不穏な空気をもたらしています。導入部分で家庭や会社を取り巻く背景を少しだけ語り、後はずっと暴走する列車に付き合います。

最初の人道ミスは如何にもありそう。仕事に慣れてくるとマニュアルより手抜きになるもんです。今までと同じ手順で挽回出来た事が、アクシデントが重なり、事態は悪い方へ進む一方。この辺は列車でなくても、現場仕事をしている人は、他人事じゃない気持ちになるかも。

開映間近に行ったもんで、空いているのは前しかありません。三列目の真ん中に座った途端、しまった!と。これはトニー・スコットの作品、またかちゃかちゃ画面切り替えられて、気分が悪くなるわと覚悟していました。しかし今回は割としっかりアングルを固定して、トニスコにしては切り替えはぐんと少なかったです。被写体がとにかくどでかいので、これはとても良かったです。

時間と場所を少しずつ画面に提示、刻々と惨事の前触れを観客に示す前半から、後半は豪快に暴走する列車のシーン一本やり。色々書くより、まぁ観て下さいって。こんなにハラハラしたのは久しぶりで、スクリーンから目が離せません。この作品は実話を元にしており、アメリカの観客には、事の顛末は周知の事実なのでしょう。でも日本の観客は知らないので、ハラハラ倍増。もしかしたら、誰か死んじゃったのかも?と、緊張感はずっと最後まで持続します。とにかくこの辺の演出がすごく面白い!

仕事場の新人とベテラン、年若い夫と妻を亡くした中年男の両方の面を少しずつ出していく中、短い時間で信頼関係を築いていく二人。私はこの様子が好きです。アメリカお得意の、二人を見守る周囲の歓声や激励の演出も心地よいです。自分も中に加わった気分。フランクの娘の「パパなら出来るわ!」の声援は、アメリカ映画では鉄板ですが、何度聞いても士気の上がる励まし方です。

ラストは、それなら最初からその手を使えと一瞬思いますが、まぁいいんですよ、面白かったから。脚本が拙いと言うより、現実もあの手この手を使いながら、結局こういう方法で解決が多い気がするなぁ。

現場のトラブルには、使えないお偉方より、ブルーカラーの現場作業員の方が数段使えるのも、日米いっしょみたい。そして会社は、ベテラン新人、老若の者が集まってこそ知恵と力が合致して健全なんですね。

デンゼル様はいつも通りの好演。ある事柄から、フランクの男気溢れる正義感は、一見信じがたいのですが、彼が演じるのですごく納得。クリス・パインは初めて観ましたが、ハンサムだしアクション出来るし男っぽいし、有望株だと思います。爽やかなのにオスっぽいところがいいです。ロザリオ・ドーソンが司令官として、二人の上司に当たるのでしょうか?切れ者だけど温かい人柄を感じさせる上司で、とても良かったです。黒人女性が出世出来るなんて、アメリカも進んできたのですね。

観た後、ああ面白かった!と、ほこほこしながら劇場を出られる作品です。特にアメリカの娯楽映画好きさんには、堪らない作品だと思います。近年のトニー・スコット作品では白眉でした。


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