ケイケイの映画日記
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2009年12月30日(水) 「パブリック・エネミーズ」




今年最後の鑑賞作(多分)。有名なデリンジャーのお話で、マイケル・マン×ジョニデのコラボなので、取りあえず観ておこう、的な鑑賞前だったのが功を奏したのか、割りと不評な作品ですが、私はそこそこ楽しめました。すみません、年末につき忙しく、あらすじは今回カットね。

まず良いところは、クラシックカーやファッションなど、時代の再現の仕方です。どれも凝って作りこんでいるという風ではなく、サラリと堅実に再現しています。

マンと言うと漢な作風の代名詞的監督ですが、今回マリオン・コティヤールとジョニデ演ずるデリンジャーの恋模様もしっとりと描かれています。美男美女が演じるラブシーンは、男は女を守り、女は性根を据えてついて行く様子は、男は男らしく女は女らしくあった時代のクラシックな風情がよく出ていて、ロマンチックもOKなんだと、マンの意外な手腕を確認出来ます。

狙いは悪徳銀行に定め、味方は絶対見捨てないデリンジャーは、「社会の敵(パブリック・エネミーズ)NO・1」と警察から手配されても、民衆からはヒーロー扱い。その背景には大恐慌時代の鬱屈した国民の感情があったのでしょう。

敵対する警察の指揮を執る捜査官メルヴィン・パーヴィス(クリスチャン・ベイル)。出世を目論む上役(ビリー・クラダップ)の駒の一つである悲哀に耐えながら、失態も経験しながら辛抱強くデリンジャーを追い詰めます。でもこの人がなぁ。悪くはないのですが、イマイチ印象に残りません。時代の変遷により、経済ヤクザ的になっていくバックのシンジケートの協力が得られず、デリンジャーが次第に時代から取り残される哀しさはとても浮かび上がるのに、パーヴィスの方は、不本意な捜査をしなければいけない葛藤の描写が薄いです。ここはもっと深く描いた方が、作品にコクが増したと思うのですが。

ケレンのないオーソドックスな銃撃戦、鮮やかな手並みの脱獄、どこでも素顔を晒すデリンジャーの大胆不敵さ、素敵な美男美女のラブシーン。そして死にゆく者に哀悼の念を感じさせる演出と、各プロットでは、マンの男の美学が炸裂していて楽しめるのに、テンポはやや冗長で散漫。あまりよろしくないです。140分と充分に尺はあるのですから、もっとパーヴィスにも焦点を合わすなり、警察内部の悪役も一人に絞るなどした方が、お話はまとまったと思います。ラストに同じ捜査官のウィンステッドにより、とても心に残るシーンがあるのですが、ここも実話なのかもしれませんが、そこは脚色してパーヴィスにその役をふった方が良かった気がします。なので不評の感想もわかります。

それでも私はダンディなジョニデ、エキゾチックなマリオンを筆頭に、役者がそれぞれ好演していたし、流れは楽しめなかったけど演出の細部には、やっぱりマンは上手だなぁとしばしば唸ったので、楽しめました。

でもお客さん少ない!12月29日の朝9:20の回というのを差し引いても、3人で観る映画ではないと思うぞ。こういう作品がそこそこヒットしてこそ、映画興行も安定するんでしょうね。


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