ケイケイの映画日記
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2009年01月02日(金) 「ミラーズ」




皆さま、今年もどうぞよろしくお願い致します。

と言う事で、本年一発目は念願叶って、元日の映画鑑賞となりました。昨年のお正月の傑作ホラー「ヒルズ・ハブ・アイズ」に続き、フランス人監督アレクサンドル・アジャがハリウッドに招かれて撮った作品です。傑作だった「ヒルズ・ハブ・アイズ」に比べると見劣りしますが、見え隠れするツッコミをかわす風格が感じられて、力がついたんだなと感じます。

元NY市警の刑事ベン・カーシー(キーファー・サザーランド)は、一年前誤って同僚刑事を射殺。そのため現在は停職中で、酒びたりに。妻のエイミーや子供たちとは別居、妹のアンジェラ(エイミー・スマート)の家に居候しています。何とか生活を立て直したいベンは、火災後、裁判中のため現状のままのメイフラワーデパートの夜警の仕事を見つけます。しかし彼が夜警中に不可思議がことが立て続けに起こり、それが鏡から起因していることに気付きます。不審な出来事は、やがてベンの周囲で惨劇を巻き起こします。

冒頭の前任者の不審な死が映されますが、役者さんの鏡を前にしての、追い詰められた恐怖心満載の演技が上手く、序盤から期待を抱かせます。

演出はかなりオーソドックス。「ヒルズ・ハブ・アイズ」の時も書きましたが、この方向性への転換は成功みたいで、暗闇に一人警備する恐怖、焼け跡の不気味なマネキンの情景、音やBGMで煽るドッキリなど、全部マックスではありませんが、平均点を上回るくらいは、あげられます。特に感心したのは、大火傷した女性が出てくるのですが、手足や顔などの造形だけではなく、ちゃんと衣服がはだけ、露出した乳房まで焼けただれたメイクがしてあったことです。ゴア描写目当ての人はそれほどでもないでしょうが、普通の映画好きには、充分目をそむけたくなる造形です。

このように視点はコアなホラー好きではなく、一般の映画好きを対象としていると感じました。その方が集客が見込めますもんね。しかし妻エイミーは監察医らしく、遺体の解剖場面あり、切り裂きジャックよろしく喉元をかき切る描写などもふんだんにあり、年季の入ったスプラッタファンにも御満足してもらえる程度の、血まみれ描写もあります。

その他ハリウッドホラーのお約束、美女のお色気場面も押さえています。妻役ポーラ・パットンは大変美しくスタイルがいいのですが、仕事と似つかわしくない衣装で無駄にフェロモンを振りまき、胸の谷間もおみ足もみせまくりです。エイミー・スマートに至っては、フルヌードあり。そのヌードの直後にギョッとする描写がありますが、これが大変印象に残るのですね。監督はエイミー・スマートの方が好みなんだと思うなぁ。だってホラー監督だもん。

医師の妻なんですが、最初ゴア場面のための医師役かと思っていたんですが、彼女の夫への同意の仕方を観ていると、これは役柄が深くかかわっていると感じます。医師という職業は、例外もありますが、基本はデータや記録など、目に見えることを信じて進む、仕事なんじゃないかと思います。だって「奇跡を祈りましょう」と医師から言われたら、それは最後通告ですから。なのでエイミーが自分の目で確かめて、初めて夫に同意を示すのは、職業柄演出力アップに役立っていたと思います。

そしてベン。酒浸りになりダメな男に成り下がった夫であり父である男が、命がけで妻子を守ろうとする姿が、鏡の謎と共にもう一つの主軸となります。今もって老年の父のドナルドに、男っぷりは負けている感のある息子のキーファーですが、うらぶれた男の崖っぷちの底力を演じて、とても感情移入出来る好演でした。

なので鏡の謎の陳腐さ、もう一人の夜警のおじさんには、何故鏡は取り憑かなかったのか?などなど、疑問が残る展開だったのですが、監督がホラー映画の基本に忠実に作ったので、観ている私も、少々の疑問はすっ飛ばそうという、これまたホラーの基本に戻っての鑑賞でしたので、それほど気にはなりませんでした。この辺は発展途上監督の、勢いでもあると思います。

私が一番気に入ったのはラスト。結構なスペクタクルアクションの後の展開は、家族の再生を切に願った男に対し、非情で哀しいものでした。しかし家族を守ろうとして取った、強引な行動のけりの付け方としては、とても納得もできるものでした。もう一つの主軸を上手く生かせたことが、鑑賞後の余韻を深いものとしています。

怖さもほどほど、出来としては中の上くらいかな?私はとにかくラストの苦さが気に入ったので、これからもアジャ作品は見続けるつもりです。



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