ケイケイの映画日記
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2008年09月16日(火) 「ウォンテッド」




先行上映で、夫といっしょに観てきました。ローカルシネコンである我がラインシネマで鑑賞なので、余裕で良い席が取れるだろうと小一時間前に到着すると、何と前から三列目から前しか空いてない!な、なんと!まぁ三か月前から予告編をバンバン流してましたしね、娯楽大作はこういう努力が大切と思われ。ツッコミ満載ながら、夫婦ともども大変楽しみました。監督は「ディ・ウォッチ」のロシアのティムール・ベクマンベトフ。如何にもハリウッド的な娯楽作ですが、内容の割に大味感がないのは、監督のセンスのお陰かな?

イケテない毎日を送るサラリーマンのウェスリー(ジェームズ・マカヴォイ)。仕事では嫌な上司に絡まれ、プライベートでは同棲相手が自分の同僚と浮気していて、ストレス満載な日々を送っています。鬱々としながら、自分を抑え込むため、パニック障害の薬を買いに行ったウェスリーは、そこで自分が標的にされた銃撃戦に巻き込まれます。救ってくれた謎の美女フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)から、ある場所を紹介されます。そこは神に代わり世の中の悪人たちを暗殺する組織「フラタニティ」でした。リーダーのスローン(モーガン・フリーマン)から、彼の父が一員だったこと、彼にも他の人にはない優秀な素質を受け継いでいると教えられ、一員になる運命だと言われます。悩んだ末自分の運命を受け入れたウェスリーは、父の敵クロス(トーマス・クレッチマン)を追いかけます。

冒頭の、えっ?あなたエージェント・スミスさんですか?的アクションシーンで、「マトリックス」の亜流かとも思わせましたが、あの手の「コミックで語る哲学」っぽい雰囲気はありません。

前半は、平凡な若いサラリーマンの最大公約数的悩みに苛まれるウェスリーの描写が、非常にリアル。本当は仕事に行きたくない、恋人とも別れたい、嫌な上司や自分を小馬鹿にした同僚もぶっ飛ばしたいと思いつつ、その後どうなるかと考えると、あきらめたり先延ばしにしてしまうこと、ありますよね?この部分は共感できる人が多いと思います。ウェスリーがパニック障害だと誤解している、ストレスや緊張感がマックスになる時の描写は秀逸で、こっちまで血管が切れそうなくらい、ハァハァします。なので彼が「運命」を受け入れる時、とっても爽快感がありました。

ウェスリーの特訓場面を観て、何故R15か納得。パク・チャヌクも真っ青な流血ぶりです。でも流血観ながら笑える描写だったと思うのは、私だけか?荒唐無稽だけど、資格取ったけど実践では全然使えなかったよ、という経験がある人も多いでしょう。なので「理論より実践」がモットーの訓練ぶりには、妙に納得します。

時空が行ったり来たり、夢か幻か?もスピーディですがわかりやすく、傷を癒してくれる万能温泉(?)もあって、なかなか楽しいです。ちょい「X-MEN」を連想させるような曲がる弾丸シーン以外は、取りたてて斬新なアクションシーンはありませんが、アクションは興奮させてハラハラさせてなんぼのもん、という認識が私にはあるので、これも楽しかったです。アクション場面は観る方も動体視力が要求されるのが多く、中年の身には前から三列目は辛く、それがちょっと残念でした。

これが後半になって、盲目的な殺しの掟に疑問が生じ、幾らなんでもこれでは無茶苦茶だろうと思っていたら、これには裏がありました。ある人物が殺しのリストに上がり、その直後キーパーソンとして大物俳優テレンス・スタンプ登場で、私のもしかして?の勘は大当たり。夫はスタンプ氏を知らないので、あっ!!!と驚いたそう。なので知らない人は、顔など検索しないように。

暗殺者たちの盲目的な従いぶりは、自分は善き事をしているんだという、暴走する宗教に似たものを感じました。ここでも洗脳の怖さを感じさせます。人が人の命を決めるなど、神意外そんなことは出来ません。その手伝いをして、初めは謙虚な気持ちだったはずが、いつしか自分が神にとって代わった様な、そんな傲慢な気持ちが生まれたんでしょうね。こういうことまで考えなくてもいい作品かも知れませんが、ラスト近くに見せるフォックスたちの安息の顔には、心打たれるものが私にはありました。

「つぐない」も「ペネロピ」も見逃した私、千秋の思いで待ち焦がれたマカヴォイ君には、大変満足致しました。ヘタレ青年が必殺の殺し屋になるまでの、希薄なはずの現実感も、彼が演じることで納得感が出ます。彼の無色透明な好青年な雰囲気は変幻自在で、社会派から文芸モノ、女子好みのロマンスまでなんでも来いです。初のアクションものでも吹き替えやCGに助けられてはいるでしょうが、他のお歴々と遜色なく肩を並べています。生後間もなく別れた父恋しの描写も、母性本能をくすぐります。

母性本能と言えば、アンジー。尖がっていのは今は昔のお話。実子以外にもアジア人黒人の養子も持つなど、今や「世界の母」の彼女。目の覚めるアクションシーンや形相でライフルをぶっ放しても、強く印象に残るのは、ウェスリーを見つめる、母性溢れるまなざしです。キスシーンも愛と言うより、彼の男を上げたいがための母心のようなもの。たった一度の嘘にも、フォックスの心情が忍ばれます。自分の人生が生き生きスクリーンに跳ね返る、本当に素敵な女優になったなと、感心してしまいました。




無用に人が死に過ぎる、たった六週間であんなに凄腕になるか?など、いっぱいツッコミもありますが、それ以上に魅力的な部分がふんだんにあったので、今回は不問に致します。続編の噂がありますが、マカヴォイ君以外はキャスト一新なはずなので(そうなんですよ)、次回を予想すれば、シャーリーズ・セロンとサミュエル・L・ジャクソンに千点。他のキャストでも観に行きます。


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