ケイケイの映画日記
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2008年08月28日(木) 「セックス・アンド・ザ・シティ」




レディースデーに「SATC」を観る、という誠に正しい鑑賞です。そう思う人が多数おられたみたいで、平日のラインシネマ、久々の盛況でした。ドラマは全く未見でしたが、あらゆる女性雑誌でこの作品の特集を組んでおり、主要四人のキャラと、これまでの粗筋を頭に叩き込んでの鑑賞でした。いや〜想像以上に面白かったです。通俗的でありながら、辛辣でリアルな描写も含み、中年女性たちを描く「ガールズムービー」という趣でした。

ドラマ終了から四年。PR会社社長のサマンサ(キム・キャトラル)は若い恋人スミスと変わらずロスに住んでいますが、事あるごとにNYに帰ってきます。シャーロット(クリスティン・デイビス)は夫ハリーと仲睦まじく、子供が出来ないため中国から養女のリリーを迎え、ますます家庭は円満に。ミランダはバーテンのスティーブと結婚。一人息子は5歳になりますが、認知性の義母の介護や、仕事と家庭の両立の大変さに疲れ気味です。そんな中、キャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)は作家として三冊本も出し、長年別れと再会を繰り返してきたミスター・ビッグ(クリス・ノース)との仲も順風満帆。ようやく二人は、結婚へと話が進みのですが・・・。

本当に作り方が上手い。びっくりしました。ドラマの粗筋をたたき込んだくらいの私でも、充分楽しめます。華やかなNYでキャリアウーマンとして成功している、まずこの部分で少数派のはずの女性たちなんですが、キャラの肉づけが、幅広い層に理解と共感を呼ぶようにしてありました。仕事と家庭の両立、不妊の悩み、自分を押し殺しての若い恋人と恋愛は本当に自分らしいのか?否定していたはずの結婚が40にして決まり、潜在的な結婚願望があったのか猪突猛進になってしまい、花婿は置いてきぼり、などなど、40代の女性の悩みの博覧会のようです。

賢明な答えはすぐに出ず、悩み苦しみズタボロになる姿は、とっても人間臭くそして愛らしい。普通は仕事にも成功、美貌にも恵まれファッションはブランド品に囲まれて、男も不自由せずの女性たちなんて、鼻もちならないはずなのに、あぁ私たちシモジモの女と同じ悩みを抱えているなんて、やっぱり女同士よねぇ・・・と、とても共感できるのです。一見完璧に見える女性たちの「弱さ」の見せ方の上手さが、ドラマのヒットの要因の一つだったのでしょう。

そしてとても潔いと思ったのは、男性の甲斐性をアテにする人がいなかったこと。たまたまミスタービッグはお金持ちですが、ストーリーからは、キャリーがそこに惚れたようには感じません。彼女たちから見れば、年収は数倍格下のスティーブに対し、他のみんなが好感を持っているのは、純粋に彼の人間性を観ているからでしょう。仕事もやっぱり頑張らなくちゃね。私は「この指輪は自分で買いたかった」と言った、サマンサの男前さに感激しました。

まずはその辺が前面に感じるので、ゴージャスなバカンスやファッションも、上手く女心をそそるポイントになっていました。私は正直このキャリー役で、サラ・ジェシカ・パーカーが一躍アメリカのファッションリーダーになったのが、とっても謎だったのです。スタイルはいいけど小柄だし、ハリウッド的美人とはちと違うし、個性派キャラというのでもなし。しかし画面に出てくるキャリーは、本当にどんなファッションもよく似合い、彼女なりの着こなしが出来ているのです。いくら素敵な服でも、着ているのがスーパーモデルでは観賞用になりますが、彼女の見事な着こなしを観ていると、自分だって頑張ればああなれるかな?という、女心を刺激したのでしょう。彼女の二の腕や太ももなどのしっかりした筋肉を観て、あぁ努力しているんだと立派に思い、私もサラが好きになりました。

そんな頑張っているキャリーが見せる悲惨な素顔や、他の三人が見せる女体盛りや全裸ファックシーン、お漏らしなど、普通なら下品に映るはずのものまで、爆笑したり痛々しかったり、感激で涙が出そうになったりと実に的確に挿入してあり、お見事。40女の赤裸々な悩みに伴う無様さが、こうもキュートの映るのかと感嘆しました。

男性陣の悩みも、私なんかには手に取るようにわかり、とっても同情しちゃった。優柔不断の中から、しっかりと誠意も読み取れます。彼女たちが怒るのも最もなんですが、結婚や恋愛は、正しい事が必ずしも正しいとは限らないもの。相手をどこまで受け入れるか、許せるか、それは当事者でなくては測れないものです。中年ならではの味わい深さで、それを感じさせてもらいました。

ラストも40女ならではの見識の高さと落ち着きを感じ、とっても良かったです。女の友情も捨てたもんじゃないと、胸を張れる作品です。女同士で観て、あぁでもないこうでもないと、鑑賞後話がはずむこと絶対の作品です。この調子で5年後10年後の「SATC」が製作されることを、熱望します。


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