ケイケイの映画日記
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2007年04月05日(木) 「ホリデイ」



公開すぐに観ようと思っていたこの作品、や〜と!観ました。春休み&姑さんの白内障の手術&月末のレセプトと、次々私に襲い掛かり、何と2週間ぶりの映画です。画像の良い感じの、華も実もあるスター俳優たちの笑顔を観れば、だいたいの予想はつく作品ですが、私はとても気に入りました。見逃さなくて良かった!



クリスマス前だというのに、ロンドンの新聞社に勤めるアイリス(ケイト・ウィンスレット)は、二股かけられていた恋人(ルーファス・シーウェル)の婚約を目の当たりにし、方やロスアンジェルスで映画の予告編を作る会社を経営するアマンダ(キャメロン・ディアス)は、同棲中の恋人(エドワード・バーンズ)に浮気され追い出してしまいます。傷心の二人はネット上で知り合い、「ホームエクスチェンジ」という方法で、2週間限定で、家を丸ごと交換してリフレッシュすることに。彼女たちに待っていたのは・・・。

プロットがとても効いています。性格や仕事、年収は違っても、彼女たちに共通しているのは、恋を失ったばかりの恋愛に不器用な女性だということ。普段なら口にしないことや行動など、2週間の限定なら、大胆にもおせっかいにもなれるものです。生き生きと再生されていく二人の女性が、観ていてとても気持ちがいいです。

確かにこんな次から次へと魔法のように都合よく事が運ぶなんて、現実では有り得ません。全然リアルじゃない。でも映画は所詮は夢を見せてくれているもの。大切なのは、その時々の人物たちの心のひだを、どのように繊細に掬い取って描写するかだと思います。この作品は、その点がリアルで優れていたと思います。

アイリスの恋に奥手で涙もろくて情が濃く、都合のいい女の自分に嫌気がさしながらも、自分のどこがいけなかったの?と顧みる善良な様子は愛しいし、アマンダの気が強く可愛げのない様子も、仕事仕事で精魂付き果てている女性がいっぱいいる今、もっと大きな目でアマンダを包んであげて、可愛い女にしてあげてよ、と一回り上くらいの私なんぞ、二人の気持ちが手にとるようにわかり、とても共感出来るのです。

二人だけではなく、イケメンで秘密アリのアマンダの兄グラハム(ジュード・ロウ)や、性悪女に引っ掛けられてはいつも傷つくマイルズ(ジャック・ブラック)の心模様も、わかるよなぁ〜、うんうんと肯きっぱなし。何が気持ち良いって、登場人物たちは皆自分の人生を大切に思い、どうしたいのかと真剣に思い悩む、その姿の誠実さです。

ケイトは「ブリジット・ジョーンズ」のレネー・ゼルウィガーを彷彿させるようなコメディエンヌぶりで、今まで観た彼女の中で飛び切り可愛いです。しかし何を演じても上手いなぁ、この人は。キャメロンはいつもの彼女に若干陰を滲まして、こちらも好感です。ジュード・ロウの「ソフィー&オリヴィア」の件は、私はネタバレは読んでいませんが、ピンと来ました。だってそんなプレイボーイが、妹の家に再々泊まらないでしょう?泊まらせてくれる家なんて、ゴマンとあるはず。自宅でアマンダに語る自分の境遇の苦悩は、世の中たくさんの人の賛同を得られるはず。

私が一番びっくりしたのは、ジャック・ブラック。最初このメンバーを観て、美男美女+野獣と思っていたのに、とってもかっこいいの!映画や音楽について薀蓄を語るオタクモード全開の様子も男の子っぽく、礼儀正しく穏やかな大人の男性としての落差も魅力でした。この様子なら「あなたってイイ人ね」では、終わりませんて。

老紳士アーサー(イーライ・ウォラック)とアイリスの交流も暖かく、「彼から元気がもらえるの」とのアイリスの言葉には、老人と付き合う若い世代の心構えを教えてもらえます。

私は恋愛は縁と運だと思うんです。どんなに添い遂げたくても叶わぬ恋もあれば、切っても切っても追いかけくる恋もあり。ならば先のことばかり心配しないで、今目の前に恋しくて恋しくてたまらない人がいるなら、躊躇なくその人の胸に飛び込むのをお勧めします。後で別れちゃってもいいじゃない、上手くいくかどうかなんて、そんな先のこと、誰にもわかんないよ。

涙は心の汗だ〜♪という歌がありましたが、それは本当みたい。心が乾いていると涙は出ないのですね。心の新陳代謝をよくした後のアマンダの選択に、良かった〜と安堵する私なのでした。

ところで鬼の形相で恋人に、「浮気したでしょう!」と詰め寄るアマンダでしたが、チラッと恋人が庭師さんを見ると、首を振っています。なのに恋人は「本当」のことを告白。あぁ!浮気は絶対白状したらダメなんだとか。私が独身の頃読んだ伊丹十三の本に書いてありました。伊丹氏もレクチャーされた話なんだそうですが、まず浮気を疑われたら、即行否定する。次に証拠を捉まれたら、上手いこと言って言い逃れする。もしホテルに踏み込まれたら、今入ったばかりだ、まだ何もしていないと否定する(過去何回もヤッテいても)。もしイタシテイル最中に踏み込まれたら、今始まったばかりだ、まだ出していないと言う・・・のだそうです。

どんな女性でも夫または恋人を信じたい気持ちがあるので、疑惑が99%でも、否定しているうちに、もしかしたらそうなのかもと、%が減っていくのだとか。読んだ頃は何をふざけたことを、調子こいてんのん違うぞ!と怒りまくった乙女の私でしたが、それから四半世紀オバちゃんとなり、これは真理じゃないかと思うのですね。だって否定するのは、二人の仲を壊したくないからですよね。どうでもいいなら開き直るはず。まだ愛情が残っているなら、嘘を信じてあげましょうということなのかも。これは大昔、浮気と言えば男の専売特許の時代のお話ですが、今なら男女入れ替えたらどうなるのかな?


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