ケイケイの映画日記
目次過去未来


2007年02月18日(日) 「世界最速のインディアン」


木曜日に「Gガール」とハシゴしてきました。観たお友達には全て好評で、観たかったのですが時間の関係でパスしようと思ったら、お友達のともこさんが観ないと縁を切ると言うので(拡大解釈)、頑張って観て来ました。そりゃーもー、こんな痛快な作品、誰だって勧めたくなりますわよ。ともこさんに感謝。持つべきものは良き友でんな。

1960年代後半のニュージーランドの片田舎インバガーギルに住むバート・マンロー(アンソニー・ホプキンス)は63歳。愛車のバイク、20年型の”インディアン・スカウト”を改良し続け、今も少年のような夢を抱き、乗り続けています。彼の夢とはライダーの聖地・アメリカのボンヌヴィル塩平原(ソルトフラッツ)で世界記録に挑戦すること。自分の年齢と肉体に限界を感じ始めている彼は、何としても今年は大会に出場したいと思っています。何とかぎりぎり資金を調達し、63歳にして彼は晴れの舞台に挑戦しようとします。

まぁ、何と気持ちの良い作品でしょう!
黄昏た年齢の老人を描くと、侘び寂びや含蓄が深くても、こんな瑞々しい感性を感じさせる作品は、ちょっとお目にかかれません。バートは掘っ立て小屋に住む少ない年金暮らしの老人で、年相応のお金も地位も、もちろん権力だってありません。でもでも老人どころか、若い者だって憧れる、夢と自由とガッツがあります。

なかなか調達出来ない資金のため、彼がアメリカ行きのために取った作戦は、何と貨物船に炊事係として乗り込むというもの。それまでも屈託無く子供から老人まで誰にでも平等に誠実に接し、女性には敬意を持って紳士として振舞う彼の言動を好ましく思っていた私ですが、この行動力には好感を超えて、思い切り惚れてしまいました。だって63歳ですよ?

観る前はバートが世界記録に挑戦するお話なのだと思っていましたが、アメリカに渡ってボンヌヴィルに到着するまで、暖かなロードムービーとなっています。

アメリカに渡ってからも、彼のフレンドリーな心と、本人曰く「心は18歳のまま」の内面は、出会う人達を魅了します。彼はまず最初に、「私はバート・マンロー。ニュージーランドから来た」と、自ら笑顔とともに相手に握手を求めます。この人懐っこく且つ礼儀正しい様子は見習いたいもの。「渡る世間に鬼はなし」を行くには、相手より自分の心がけが大事なのですね。一期一会の出会いを大切に、そして感謝する彼に、「袖すり会うも多少の縁」と、何故か日本のことわざがあれこれ思い浮かび、納得するワタシ。

この一期一会の描き方が本当に気持ちが良いです。芸は身を助けるあり、ゲイのお姉さんや未亡人の老女に気に入られたり、インディアンに出合ったり、ベトナムの休暇兵にも出会います。いつでも自然体で自分自身がぶれない彼は、アメリカでも故郷でも同じ。誰にでもフレンドリーで礼節を尽くします。

しかしただ瑞々しい感受性を映すだけではなく、ちゃんと年齢相応の狭心症や前立腺肥大の様子も挿入し、これがコミカル且つスリリング。年齢に打ち勝つということは、体力的な老化を克服しなくちゃいけないので、大変なのです。しかし強靭な精神はそれも超えられると立証しているところが、ひたひたと老いに向かう私のような年齢の者には嬉しいです。年寄りの冷や水感が全くないのが素晴らしい。

レースシーンは大迫力。低めの車体からの目線はスピード感がとてもあり、侘び寂び老人映画にはない、若々しい心意気がいっぱいです。

あちらこちらでバートに援助を申し出る人々。一宿一飯だったり、お金だったりしますが、素直に受け取る彼も、与える人々も、施しには全然見えません。与える人々は彼に施すのではなく、バートからもらった勇気と夢を感謝にした形だったのが、援助だったと思います。そしてバートの今の自由な生き生きした暮らしは、彼が若い時分からストイックに一つの生きがいだけに邁進し、多くの物を捨て去って手に入れたものだと、敬意の気持ちもあるのでしょうね。

アンソニー・ホプキンスはほぼ出ずっぱりで、アイドル映画並みに彼の魅力が楽しめます。走る時のゴーグルからのぞく目が、一瞬レクター博士に見えるのがご愛嬌です。老若男女、よっぽどひねくれて見なければ(上手く行き過ぎるとか)、とっても元気がもらえるお話です。ちなみに実話です。

青春の長さとは、心がけ次第なり。


ケイケイ |MAILHomePage