ケイケイの映画日記
目次過去未来


2006年04月15日(土) 「東京タワー」(地上波放送)


入院中、「金曜ロードショー」で観ました。去年の公開時には、41歳の女性と21歳の大学生の不倫物ですので、もうそれだけでケッ!となり、パスした作品です。ところがいつもお世話になっているヤマさんが、公開当時、高い評価を与えておいででしたので、ふーん、何事も先入観はダメなのねと思い、機会があれば観てもいいかと思っていました。しかし!私の感想は、ヤマさんてロマンチストなんだわぁーと、時々見え隠れするお人柄を再認識しただけとなりました。以下多分罵詈雑言、好きな方には申し訳ないので、お気をつけ下さい。

東京の一等地でセレクトショップを営む41歳の美貌の人妻詩史(黒木瞳)と、三年前から関係を持つ21歳の大学生透(岡田准一)のカップルと、その友人耕二(松本潤)と35歳の専業主婦喜美子(寺島しのぶ)のカップルが織り成す物語。

これだけのお話。実際観てみると、どう考えても不倫願望なり、美少年好きのそこそこ年かさの女性をターゲットにしている作品で、二つともない私はそれだけで辛い。売りは女性二人より巷でイケメンと言われるジャニーズの二人なんでしょうが、如何せん私には全然。以前病院の待合に置いてある女性週刊誌の表紙を見たうちの若先生、「う〜ん・・・」と言いながら、ぺっと裏返しなさる。「へっ???先生、何してはるんですか?」「いやこの顔、波動が悪いなぁと思って。」「この子ジャニーズの子で、今人気の子なんですが。」「いや、僕は知らない子なんですが、何となくそう思ったんで」。

その「波動の悪い顔」の持ち主が松本潤です。もう一つ好きになれない子だったんで、そうか波動が悪いからなのね、と私はその時納得。岡田准一の方は嫌いではありませんが、でも私には「その辺のボク」以外ではありません。黒木瞳ってさ、実年齢は私より一つ年上なのよ。設定も似通った年ですし、「ボクたち」に萌えられなければ、共感もへったくれも無いわけで。

入院中東野圭吾の「白夜行」を読み、その中で初体験の中年女の手練手管に骨抜きになった高校生が出てくるのですが、そのことしか考えられなくなり、成績は急降下。しかしその浅ましくも滑稽な様子は、あー、17歳くらいの時はしゃあないなぁと、リアルに理解出来ましたが、岡田の乙女のような純愛の貫き方は、私には21歳にしても男として軟弱に感じました。いくら天下の黒木瞳が相手とはいえ、三年も続く熱中は、熟女フェチとしか私には思えません。これが年の差が10歳くらいか、出会いが20代半ばのある程度大人になった時なら、納得出来たのですが。お母さんが仕事で忙しく、甘えられなかった分年上好きという風にも、描かれていませんでしたし。この辺に「白夜行」と「東京タワー」の、原作者の男女の違いを感じました。だいたい名前も詩史って、四十女がキャバクラ嬢みたいでいや(中年の本物の詩史さん、許されてね。本物はいいのよ、本物は)。私の年代は古式ゆかしい昭和の名前がいっぱいで、こういう名前、綺麗でいいわーと、中年女が喜ぶだろうと言う、原作者の陰謀が感じられます。


松潤の方も、「人妻は可愛い。」以下よく覚えていませんが、ふざけたセリフをはく割には、年下男のため新しい下着を着て見せたり(これ基本形ですわな)、湯船にいっしょに入り、桃を口移しで食べさせる彼女に、「この人には悪魔が棲み付いている」みたいなセリフが入り、怖気づく様子なんか、ふふん、この程度でビビるなんて、まだまだおケツが青いのよ、人妻を相手にするなんて100年早いわと思ってしまいます。
この妻達にしても、黒木妻は実際は夫の庇護の下仕事をしているわけで、かっこつけている割には、みかけだけ。何が一番腹が立つかというと、自宅や別荘などに平気で間男引っぱり込むことです。教養ある知的でエレガンスな様子を気取っても、お里が知れるというもの。あのベッドは夫婦のベッドだろうが、したかったらラブホでせい!と怒りがメラメラ。寺島妻の方は、確かにリアルな専業主婦の憂鬱を感じさせ、まだマシでしたが、男との逢瀬のお金も、松潤が惚れ直すフラメンコも、お金の出所は結局夫。亭主の金で男作るか?金と暇がありゃ、私ならもっとしたいことあるぞ、あんた色だけかい?と、ここでもまた怒りが込み上がる私。

黒木妻の夫は岸谷五朗で、妻の不倫を知りながら見て見ぬふりする心のひろーい夫役ですが、私は男の浮気と女の浮気は違うと思っているシーラカンスなので、こういうしたり顔した亭主も大嫌い。それに岸谷の売れっ子CMプランナーって、ミスキャストじゃないですか?だって彼の容姿やイメージから都会的な感じする?演技自体は悪くなかったですが、長谷川初範なんかの方が、年齢的にも良かったかも。

ラストおフランスに渡り、黒木&岡田のカップルの恋の成就には、正直噴飯物でした。確かに年の差カップルは世にたくさんあり、私も否定するわけではありません。しかしこれくらい年の差があれば、特に女性が年上の場合は、内面的に相手に与えられる、人として一段高いモノが感じられれば納得出来ますが、この詩史なる女性、普通相手の将来を考えて身を引く考えが浮かんでもいいはずなのに、自分の保身以外では、別れは考えませんし、自分が先に老いることも、全然頭にないです。同世代の女性としては、あまりに幼稚過ぎます。

もう一人、岡田に刺激された松潤が、高校時代同級生の母親に手を出すのですが、この母親は浮気がばれて家庭崩壊したあとも、松潤が忘れられない設定です。この人を膨らませてですねー、あの当時夫とはセックスレスだった、女としてこれで終わりたくない、だから分別なく娘の同級生とエッチしちゃった、それが思いがけず夫より良かった、だからまだ忘れられない、みたいな後日談を描いた方が、ドロドロしてて、女の性の怖さや哀しさが描けそうで、見応えあったかも。幼稚な有閑マダム(死語)を描くより、私はその方が観たかったです。


ケイケイ |MAILHomePage