ケイケイの映画日記
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2006年03月25日(土) 「ポルノ時代劇 亡八武士道」

石井輝男監督、丹波哲郎先生主演のカルト大作。この作品が製作された1973年当時の東映は、お色気作品、+バイオレンスの作品も数多く製作されていました。小池朝雄(『子連れ狼』)の劇画が原作のこの作品、何と言っても丹波先生が主演ということで、当時のこの路線としては、格上作品ではなかったかと思われます。しかしキャストは格上でも、中身はかなりハチャメチャ。でもすんごーく面白かったです。

役人に追われる身の剣豪の浪人・明日死能(丹波哲郎)は、吉原遊郭の総名主・四郎兵衛(遠藤辰夫)に腕を買われ、拾われます。四郎兵衛の命令は、自分と対立する売春組織を潰すこと。敵であろうが役人であろうが、斬って斬ってきりまくる死能。ようやく幕府も、この争いの仲裁に立ちますが、その条件とは、死能の首でした。

と、ほとんど筋を書いてどうするねん、という話。しかし筋なんかどうでもいい作品です。場面場面をどう見せるかが命の作品なのだ。オープニング、いきなり飛ぶ丹波先生にキャー、先生が飛んでいる!と喜んだ私です。首が飛び血しぶきが飛びまくる大立ちまわりの中、出演者がクレジットされ、最後に川に沈む死能の背中に「石井輝男」の文字が浮かんではすぐ消え、まあかっこいいわ!という感じです。

ちなみに忘八とは「義・礼・忠・信・孝・悌・廉・恥」を忘れた人間のこと。いうなれば「人でなし」でんな。その亡八を、人であったため試験に不合格だったのに、なんで亡八になれんねんというツッコミはさて置き、私が八つの中で一番感じ入ったのは「恥」。なんというか、お姉ちゃんたちのてんこ盛りの裸攻撃なのです。

意味無く挿入される裸は、まさに当時大映のエロス路線の女神・渥美マリが語った名言、「裸のための裸なんていやです」の、裸のための裸シーンの連続です。それも当時はヘアはご法度だったので、皆さん全裸で大事な部分はお隠しになり、当時は当たり前だっただろう姿は、今観るととっても間抜けで笑えます。初めアンヌ隊員こと、ひし美ゆり子のヌードが出てきた時(美乳でびっくり)、ちょっとエロだなぁと思った私ですが、その後あれだけおっぱいがいっぱいだと、ほとんどコメディ。今はEカップくらいの女性はごまんといますが、昔はCカップも珍しく、これだけぷるんぷるん揺れるほどのおっぱいの女性を探すのは、大変だったろうなと、妙に感心してしまいました。

一番すごいシーンは、死能があわや火達磨かのシーンで、顔を黒い頭巾ですっぽり隠し(顔は火傷しちゃいかんので。芸が細かい)、女亡八たちがごろんごろん転げまわって、着ている着物で「消火」する場面。水も被らず、あんなんで火が消えるかい!しかも隣に水がめあるし!というツッコミはさて置き(さて置きばっかりの作品)、消火活動の済んだ女たちの着物を斬ると、また皆さん全裸。そしてその後、全裸のまま敵方の内田良平と闘うわ、説明なくいきなりご登場の外人女を、誰が責めるかでキャットファイトするわ、本当にハチャメチャ。

しかしもうええわ、ゲップが出そう、とはなりません。何故ならあれだけ裸ばっかりだと、ほとんど女湯状態です。私が子供の頃は「時間ですよ」や「影の軍団」の風呂屋のシーンなど(「大江戸捜査網」でもあったかな?)、テレビは女性の裸に制限が緩く、頻繁にゴールデンタイムに出てきました。その当時を思い出し、ポルノというにはのどか過ぎ、今観るとエロス感はほとんどないからです。

裸に圧倒されて、肝心の立ち回りは印象が薄くなりがちですが、それでもアヘン中毒にされ、役人との立ち回りで禁断症状が出る死能が、自分の足を刺し、正気に戻ろうとするラストの立ち回りは、一番力が入ります。ライトアップされた死能の顔が、ドサ回りの剣劇役者のようなチープさで、ここも良いです。正気に戻るため自傷するって、「エイリアン2」のヒックス伍長もしてませんでしたっけ?(マイケル・ビーンよ、今何処)。

丹波先生は当時51歳。懐かしの「キイハンター」で先生に初めて出会った私ですが、そのダンディさ渋さは子供心にもカッコ良く、今でも日本人俳優で一番男ぶりが良いと思っている人です。どういう経緯でこの作品に出演となったかは知りませんが、当時も大御所だったはずで、こんな珍品に主演なんて懐が深いと感激しました。

その他濃い顔を更に濃くメイクした伊吹吾郎にも笑えます(コメディじゃないんですが、笑えるばっかり)。この人も先の副将軍と諸国漫遊したり、マイホームパパの必殺仕事人だったりするのに、役を選ばない方で素敵です。

昔東映は、こんな感じの「大奥なんとかかんとか」「温泉なんちゃら芸者」「スケバンちょめちょめ」とか大量に作っており、今ではピンキー作品として立派なカテゴリーになっています。何故子供だった私が覚えているかというと、町の電信柱や新聞、テレビで、デカデカ画像のような物が簡単に子供の目に、無差別に飛び込んできたのです。そういえば当時ピンキー路線の大ヒロイン池玲子が、いきなりテレビでおっぱいぽろんと出した時はびっくりしました(出したことではない。あまりに大きかったから)。そんな無神経な時代を過ごした当時より、テレビなど格段に規制が厳しくなっている現代の方が、信じられない性犯罪が起こるのは何故なんでしょうか?表面だけ規制が厳しく、現実はよりエスカレートした物が、簡単に手に入ることが問題なのだと思います。

大阪のローカル番組で赤井秀和が、もし死ぬ前にエッチ出来たら、誰としたいかという問いに「池玲子!」ときっぱり答えていました。彼は私より二つ上。きっと坊主頭を帽子で隠し(昔中学生はジャーヘッドだった)、「大人一枚」と、ドキドキしながら映画の券を買っていたのでしょうね。一人でAVを観るより、健康的だと思うのは私だけかな?


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