ケイケイの映画日記
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2005年11月23日(水) 「エリザベスタウン」

いや〜、困ったな。予告編と全然違うお話。予告編では仕事に失敗し失意の若い男性が、父親の死をきっかけに再生していく姿を、チャーミングな不思議ちゃんぽい女性との恋を絡めて描くのかと思っていました。しかし観た直後の感想は、副題に「キルスティン・ダンストのプロポーズ大作戦」とでもつけた方が良かったような代物。キャメロン・クロウらしくBGMは良いし、変にお洒落ではなく地に足ついた印象的な良いシーンも数々あるのに、目的でないものを見せられたので、落胆してしまいました。

シューズ会社に勤めるドリュー(オーランド・ブルーム)は、新製品の開発に失敗し会社に大きな損害を与えたため、辞めざるを得ませんでした。恋人とも別れ、失意の彼が自殺を図ろうとした時携帯が鳴ります。妹からの連絡で父が故郷のケンタッキーのエリザベスタウンで急死したというのです。長男の彼が遺体を引き取りに向かうことになり、ケンタッキーへ向かう飛行機でフライトアテンダントのクレア(キルスティン・ダンスト)と出会います。おしゃべりの彼女ですが不思議な魅力のある女性で、のちドリューと大きく関わるようになります。

すごく有名なシューズメイカーみたいですが、そんな大きな会社が、若い社員一人に責任をおっかぶせるというのがまず疑問。アメリカは年功序列は関係なく、実力主義で年俸制が多いと聞くので、この辺は不確かですが。

予告編で車を運転中に泣きながら拳をあげるオーリーに、昔の父とオーリーがオーバーラップするシーンで、恥ずかしながらいつも涙ぐんでいた私。てっきり父がどういう人か、父の故郷で昔馴染みや親戚たちの話の中から浮き彫りにされ、彼が失意から再生するとばかり思い込んでいた私は、一向に父がどういう人か語られないのでびっくり。いや語っているんですよ、みんな。「いい人だった」「人から愛される人だった。」と。でもそれだけじゃなぁ。エピドードやドラマチックな部分がまるでありません。エリザベスタウンの人々のドリューを迎える少々おせっかいな暖かさはとても雰囲気が出ていて、好印象。ドリューが嬉しく思いながらも知らないひとばかりの中で戸惑い、身の置き所に困るような様子も気持ちが理解でき、良かったです。

火葬か土葬かの話し合いに時間をさいて描かれますが、これも日本に住む者の感覚ではわかりづらかったです。お葬式も披露宴かと思うような明るさですが、これはそれもありかなとも思えました。しかし母役のスーザン・サランドンの、日本で言うところの喪主の挨拶のスピーチがどうもなぁ。夫の人となりがあまり出てきません。それどころかシモネタまで披露。えっ!とびっくり。いくらアメリカでも不謹慎ではないでしょうか?その後習い始めたばかりの下手なタップダンスを披露するに至っては???。これも日本に住む感覚ではわかりません。その他ボヤ騒動まで描いててんやわんや。もうちょっと私はしんみりしたかったです。

予告編で「特別な地図よ」とキルスティンがオーリーに手渡す場面を記憶の方も多いでしょうが、その特別の理由がどーも。もっと深くしみじみするか、切ないものが隠されていると思っていた私は、ここでも落胆。その旅行の中で父の遺言通り遺灰を巻くドリューですが、あんた一人でそんなことしていいの?お母さんや妹は?妹に「長男でしょう!」と叱責されるシーンがありましたが、アメリカは夫婦単位で物事を考えるという刷り込みが私にはあるので、彼一人で遺言を実行するなら、その理由も入れて欲しかったです。

若い二人が長電話するシーンや、惹かれあうというか、ドリューがクレアに「落とされる」姿は自然で、若々しくスイートな雰囲気が出ていて良かったです。あれですな、母とクレアはチャーミングですが変わり者です。父と息子で女性の趣味が似ているというのはやっぱり親子ですな。もっとちゃんと内容を宣伝してくれていたら、そう悪くはなかったでしょうが、予告編で泣いたのに本編では全然泣けなかった私には、肩透かし全開の作品でした。


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