ケイケイの映画日記
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2005年09月28日(水) 「忍 SHINOBI」

日曜日に角座で見て来ました。ラインシネマで会員常時千円で観られますが、新聞屋さんからもらった劇場鑑賞券があったので、金額的にミナミまで出たのですが、大画面で観た方が堪能出来るタイプの娯楽時代劇でした。オダギリジョーと仲間由起恵人気か、劇場は若い人が多かったですが、お子様からお年寄りまで楽しめる作品に仕上がったいます。

400年の間敵対する伊賀と甲賀。しかしその跡取りである伊賀の朧(仲間由起恵)と甲賀の弦之介(オダギリジョー)は恋仲でした。そんな時、天下を手にした徳川家康は、各々五人ずつ精鋭を選び戦わせ、どちらが生き残ったかによって次期将軍を決めるというのです。

最初は「メゾン・ド・ヒミコ」のオダギリジョーがとても素敵で、それで観ようと思った作品。冒頭簡単な描写ですが、美男美女の二人の出会いは若々しく清々しく、一目で恋に落ちたのには説得力があるなぁと思っていると、荘厳にして雄大な渓谷や川のせせらぎなどを映すタイトルが素晴らしく、そこへ岩代太郎の力強いBGMが流れ、まさに大自然といった風情です。このタイトルバックにおぉ!となった私は、これは拾い物かも?感が上昇しました。

十人の忍者は各々個性的でキャラが確立されており、とても楽しませてくれます。服が縄のようになるものアリ、手裏剣もどきの名手アリ、変身、人間もどき?に色仕掛け、不死身など十人が十人とも違います。忍術というより妖術のようですが、それぞれが強い印象を残し、何より観ていてスピードがあり面白い!CGやワイヤーアクションもありますが、中国の武侠物よりも、忍者が主人公なので活劇として素直に楽しめます。

私が印象に残ったのは、甲賀は黒谷友香扮する男を色仕掛けで誘い込み、毒を吐いて殺す陽炎。小さい時から毒を飲ませてそういう体にしたのですが、そのため愛する人とは抱擁もキスも出来ず、女性として無念の人生を送っています。登場シーンは多くないのですが、黒谷友香はメキメキ演技が上手くなっており、充分に陽炎の哀しさを表現していました。伊賀は椎名桔平扮する薬師寺天膳。不死身ゆえ、世の中の栄華衰勢を何百年も冷徹に見てきた彼は、平穏な光の当たる世の中には、闇に生きる忍びは不要、忍びは忍びらしい潔い死に様があると、弦之介に語ります。なんか忍者の美学だなぁ、ふんふんと納得。予告編で白塗り白髪のロンゲの彼に、ゲェ〜と思っていた私は反省。やはりこの役者、ただのねずみじゃないのですな。

他の忍びも人を殺すことだけを教え込まれた自分たちには、忍びとしてしか生きる道はないと、弦之介と朧に訴えるのに対し、絶対和ぼくを主張する弦之介は、愛は忍者を救うより恋は盲目に見えて、一軍の将としての器は大丈夫か?と思わせます。それとセリフに「さすが甲賀の弦之介」とあるだけで、手下より強そうには見えません。ていうか、忍者の中で一番魅力にかけるのが彼でした。どうしたオダギリジョー!「〜ヒミコ」の春彦はどこに行ったんだ!

それは朧にも言える事でしたが、ラスト近く伊賀と甲賀の将としての彼らの選択は、立派に大役を果たすもので、素直に胸を打ちました。私は泣きませんでしたが、啜り泣きが場内から聞こえ、それも納得。人の上に立つ者の責任の重さと厳しさを、わかりやすく表現していました。

仲間由起恵は寂しげで儚い、しかし芯の強い印象を持っているので、「ごくせん」や「トリック」の彼女は、悪くないけどなぁ程度です。しかしこの作品では私の持つイメージの彼女がいました。ラストも余韻があり、後世に残る傑作などではないですが、活劇に楽しみハラハラドキドキ、恋アリ涙アリと、娯楽作として私は充分合格点でした。


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