想い出の樹

2004年11月25日(木) 自作の連弾曲

このお教室にきてから、
ずっとアレンジや作曲が大好きだった発達障害児のSくん。
今回お教室のお友達から「Sくんと連弾がしたい!」とラブコールをもらい、
自作の連弾曲をクリスマス会で演奏することになりました。

以前この子が作る面白い曲について日記に書きましたが、
あの頃は調性感がなく、
シルク・ド・ソレイユが使うような不思議な曲ばかりでした。
これはこれで雰囲気があり、私は大好きだったのですが、
やはり今後のことを考えると調性も必要かな・・・と。

ということで、1年ほど前オルガンピアノの教材にある、
「かざぐるま」という曲を、
彼の目の前で半音ごとに移調して弾いてみせました。
案の定、面白い!と思ってくれたようです。
彼にとっては、
「こんな面白い遊びがあったのか!」という感覚だったのでしょう。
もともと耳がいいので、教える必要もなく、
こういう遊びがあるとわかったら、
自分から音を探して、どんどん弾くようになりました。

いつの間にやら調号までどこかで覚えてきて、
作曲する際に「♯3つ!」などと、
楽譜に書き写す私に言うようになりました。
調名を教えてはいるのですが、
数そのものに興味がある彼にとっては、
♯や♭の数だけで把握するほうがよいようです。

あれから1年。
この子のセンスをつぶさずに伸ばしていくには、
どういうレッスンがいいかな・・・と常に考えながらのレッスンでした。
ここ1年は移調して遊んだり、
いろんなハーモニーに即興演奏を加えて遊んだり・・・。
少しでも多くの素材を提供していこうと思ってきました。
また、素材を提供すると同時に、
ピアノ演奏の技術を高めることで、
それが作曲に生きてくるだろうという思いから、
様々な音の動きをオルガンピアノを中心に取り入れてきました。

オルガンピアノで「こいつは面白い!」という動きに出会うと、
その音の動きをすぐに作曲に使ったり、
一緒にレッスンしていて本当に面白いです。
作曲者名のはっきりしていない教材曲は、
一度楽譜どおりに弾いたあと、アレンジ可にしてあります。
彼がたった1音足すだけで、音楽が立体的になり、
つまらない教材曲に色が出てきます。
これは、本当にすごい!
こんなところにこんなハーモニーが隠れてたの?とびっくりします。

こんな風にここ1年レッスンを進めてきて、
今回のTちゃんの連弾がしたい!というラブコール。
自作の曲での連弾ならいい、というSくんの意思を受け、
早速作曲に取り組んでもらいました。
1回目のレッスン・・・・。
2回目のレッスン・・・・。
3回目のレッスン・・・・。
なかなか曲が終わりません。(笑)
こんな長い曲、彼にとっては初めてのこと。
頭の中ではTちゃんの音と自分の音が同時に鳴っています。
私は2パート分書き取らねばならないので、いつもより大変。( ̄▽ ̄;)
「ちょっとまってまって。こうでいいの?」
といちいち確認しながらの書き取り作業です。

で、やっと終わりました〜。
今日その楽譜をTちゃんにも読みやすいように、
楽譜制作ソフトに打ち込み印刷しました。
きっと彼のことだから、これでは終わらずに、
音が足されていくのだろうな〜とは思いますが、
その経緯はTちゃんにとってもよい経験になるだろうと思います。

そして、今回の作業で今後の彼の目標が見えてきました。
今回の曲、発想はとてもすばらしいのですが、
素材が素材で終わってしまっているのです。
これはどういうことかというと、構成感が全くなく、
思いつきのまま次々に音楽が変わっていく・・・ということです。
具体的にどんな感じかというと、
最初から最後まで全部がサビ、といった感じです。(笑)

8小節くらいのすばらしい素材を思いついたかと思うと、
次にはもう全く異質の素材が来る、という曲なのです。(笑)
では、今後どのようにこれを改善していくか・・。
これが私の今後のレッスンのテーマです。

まずは、思いついたすばらしい素材を、
どんどん発展させていく・・・という遊びを提供しようかなぁ・・・。
実は今回1つだけある素材を発展させているのです。
それはそれはすばらしい発展のさせ方で曲が終わっています。
作曲には一切口出ししない私ですが、
今回あまりにも次々に新しい素材が出てきて、
いっこうに曲が終わりそうになかったので(笑)、
とうとう「もうそろそろこの曲終わりにしようよぉ〜」と。(^-^;
そのときあまりにもまとまりのない曲になっていたので、
「最後は最初のフレーズにして終わろう。」と声かけしました。

そのとき作ってくれたコーダが、
最初のものとすっかり同じではない、
4小節おきに転調していく・・・というものだったのでした。
転調へ向かうメロディにするため、
メロディの流れも冒頭とは多少異なっていますし、
加えてあるハーモニーも違うものになっています。

そう。考えてみれば、彼の作曲は「アレンジ」から入ったのだった。
ということは、素材を発展させることそのものが、
彼にとっては楽しいことであり、得意分野でもあるわけで。
いまさらそれに気づくなんて!( ̄▽ ̄;)
果たしてこの発展ゲームに彼が興味を示してくれるか?
そしてそのゲームで身につけたことを、
作曲で発揮してくれるか・・・・。
クリスマス会後のレッスンが楽しみだなぁ〜〜♪






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中嶋 [HOMEPAGE]

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