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■ かくて、時は流れたり�◆薪畦紕廝腺�
４．反攻
そして、大きな転換点が訪れる。
プロミストランドの郊外で、オリハルコンの発掘を行っている富豪がいることは、人々もかねてより噂していた。だが、彼らはドル札が乱れ飛ぶ街の統治には興味を示さず、ただ黙々と発掘作業に携わっていた。
彼ら…つまり「十一番目のテン・チルドレン」こと、グレナディア一族。その当主を名乗る女性が、プロミストランドに帰ってきた。
その名を、アリステアＸＩＩＩｒｄ・Ｃ・グレナディア。彼女は東部から、プロミストランド軍の指揮権と、一つの土産を持って帰還したのである。
ダブル・トラックス上の“セイバーヘーゲン”…すなわち、新生ロケットレンジャーズ。
アリステアが投入したＲＲ部隊は、油断していた鶴来軍の目を覚まさせるに相応しいものだった。無抵抗の羊と思っていた獲物が突如牙を剥き、鶴来軍は初めての敗走を味わう。
しかも、アリステアは何故か天羅の事情に精通しており、天羅軍の戦略の欠陥や超兵器群の弱点を知り尽くしていた。彼女に味方するグレナディア一族のロステクエンジニアの助力もあり、鶴来軍は街の北西部に追いやられる。
その時、天羅軍の第二陣がプロミストランドに到着した。
長駆して運用が可能な飛空サムライを中心とする、各務軍である。
５．膠着
各務軍は降下と同時にＲＲ部隊に対し戦端を開き、激しい戦闘を繰り広げた。不意をつかれ、防戦に回っていた鶴来軍もこれに加わる。プロミストランド軍は侵略される側でありながら数が少なく、実質アリステアの率いる一部しか機能していない。彼我の戦力差がじわじわとテラ軍を苦しめた。
逆に、天羅軍にも悩みがあった。言うまでもなく、友軍の裏切りだ。
長年に渡る鶴来軍と各務軍の戦いによって生じた不信感と憎悪。それは容易には拭いがたい。テラ軍を目の前にして斬り合いを始めることさえしばしばだった。
戦闘は膠着し、天羅軍にとっては本国のそれと同様、終わりのない泥沼の戦いになるかと思われた。
６．そして
コロンビヤードによる神来山への砲撃。
それは、プロミストランドで戦う両軍の誰もが目にした。空に走る一条の白い光。突如起こった爆発。
３軍の長たちは、通信機からの連絡を待っていた。
ある者は、砲撃の成功を願い、ある者は砲撃の失敗を信じた。
だが通信機は不気味な沈黙を続け、物音一つ流すことはなかった。
そして、通信機に代わり、別のものが砲撃の結果を告げた。
コロンビヤードの防衛隊を壊滅させたセラフィム級より下、パワーズと呼ばれる天使たちの来訪だ。
その点では、彼らはコロンビヤード守備隊よりは、運がよかった。
しかし…。
鶴来軍１８万、各務軍１２万、テラ軍１０万。４０万の軍勢が、一斉に攻撃をやめた。
戦場の真ん中に降り立った一体の天使が、銃火を交える相手より遥かに危険な相手であることを、
彼らは本能的に察知したのだ。
３軍は上層部の命令を待たず、猛攻撃を開始した。
だが、銃も剣も、天使に毛一つほどの傷さえつけられなかった。
天使が羽根を羽ばたかせるたびに無数の刃が舞い、ヨロイや金剛機でさえずたずたに切り裂かれた。
一睨みするだけで、精鋭のロケットレンジャーは塩の柱と化し、サムライは硫黄に焼かれて死んだ。
戦闘開始からわずか１０分ほどで、万の単位で人が死んでいった。
まさに絶望的な戦いだった。
だが、奇跡は起こった。
天幻・緋の最高傑作と呼ばれる金剛機、岳斬の巨大な刃がついに天使の足を止めさせた。
次の瞬間、ロケットレンジャーの英雄、ウィレムが体を半ば塩に変えられつつも、天使にしがみついて動きを封じる。
各務軍のサムライ、羽道閃斎が天使に斬りかかり、その体を貫いた。
その時、三人が互いに肯きあうのを確かに見た、と生き延びた兵が後に語っている。
金剛機の心珠が暴走を始め、レンジャーの心魂機関（２世代後の差分機関）がそれに呼応した。
サムライの式が暴走を増幅し、膨大なエーテルがその場に流れ込む。
次の瞬間、三人の体と共に天使は爆発し、街の一街区を火の玉に変える。
それを目撃した３軍の長たちはそれぞれの思いにふけり、そして…期せずして同時に息を飲んだ。
３軍の英雄がその身を犠牲にしたにも関わらず、天使はまだ生きていた。体の３分の２が吹き飛んだ無残な姿ではあったが、まだ動けたのである。
我に返った天羅、テラ両軍の精鋭部隊によって猛烈な射撃を浴びせられ、ようやく天使は倒れた…。
７．現在
プロミストランド軍、鶴来軍、各務軍は街の東側、北西部、南西部に陣取り、互いを牽制しているが、攻勢に出る気配はない。天使への恐怖が、奇妙な共存状態を生んだのである。
プロミストランド軍にしてみると、天羅軍が占領しているのは元々未発掘だった、未踏の場所。取られたところでそれほど痛くはない場所だ。もちろん天羅軍の存在は腹立たしいが、正面切って喧嘩を売るほどではない、というところか。
鶴来軍は、３軍の中では最大の兵力を持ち、また最も戦闘意欲が旺盛だ。しかし、天使による被害を最も多く受けたのも彼らだった。参謀役の天幻・緋が今のところ遺跡発掘に興味を奪われていることもあり、今のところ積極的に戦闘に出てはいない。しかし、シノビは情報収集に飛び回っており、いつまでもこの沈黙は続くまい、というのが大方の予想である。
各務軍は、最も遅れてテラにやってきた。しかも、テラ軍と交戦していた時間が短かった上に、友軍の危機を救いにきたというのが（敵軍だが）テラ人の琴線に触れたらしく、（あくまでも鶴来軍に比べてだが）好意的に見られている。また各務側も、かつて遠い先祖が鉄甲船を作ってテラに渡ったという言い伝えがあり、水面下でテラ人との平和的な接触を試みている。
天使が倒れた場所は閉鎖区域として、双方の立ち入りが厳重に禁じられた。
３軍の勢力範囲の境界線である「中央街区／セントラルエリア」では、テラ人と天羅人の奇妙な共存が始まっていた。
そして…破滅のクリスマスから２年。
時は再び動き出す。
2007年04月12日(木)
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