ひとりがたり
風里



 小説 体育会系の猫

(1)

こんな話を人にすると、「少しおかしいんじゃない」、とか言われそうけど、聞いてくださいね。

ねこさんにはじめて会ったのは、そう、まだ家の向かい側が開発される前だったので、3年くらい前のことでした。
ねこさんとは本当の猫で人間で言えば大人であの堂々とした態度から察すればここいらのボスだと思います。
最初に会ったときは今みたいな貫禄がなく少しスリムでしたが、あの眼力の強さは今も昔も同じような気がします。
いつも町にいるストリートキャット、いつもいるけど、べったりはいない、甘えず媚びずやたらと誰にも喧嘩売らない、そんな猫のねこさんでした。
私の視界にねこさんを意識しだしたのはもう思い出したくもないあの日、そう、あの日でした。

私の趣味はネット、それも某チャットにいつも入り浸っていました。
私は人付き合いが苦手、出不精、小さい頃光線アレルギーだったので、特に家の中が好きな人間になりました。
お勤めしてからPCを購入、休みの日は朝から晩までネットに入り浸りでした。
そんな私を人はオタクと言うのですがオタクでも何でもいいじゃありませんか、とにかく会ったこともない友人がたくさん増えました。

ねこさんは私の家によく来ます。
私に餌をねだりません、私がこの猫はおなかが空いてるかどうかためすため、一切れのお刺身をねこさんがいつも来る裏口にそっと置いておきました。
私はネコさんのいつも家に来る時間の少し前にそれを置いて、しばしねこさんを待ちました。
ねこさんはいつものようにいつもの時間私の家を訪れ替わったことがないかなという風に周りを見回し、いつもはそれで帰るんですが、お刺身を見つけさあどうしようかとは思わず、パクリと口に入れてしまいました。
やっぱり、私はねこさんのはんのうを楽しむかのように窓からそっと見ていました。
なおもねこさんがお刺身のおいてあったところをかぎまわってるのをみてそっとドアを開けお刺身の入ったお皿とお酒の入ったグラスを持って裏口に出ました。
「ねこさんお刺身食べる?」
私は旧知の友人に話しかけるように猫の横に座り込んで言いました。
「あんたが俺にくれる気があるなら食べてやってもいいが(笑)」
と、ねこさんは人間の言葉で答えました。

don't panic,
私は心の中で叫びました。
「びっくりしたのか?最初は誰でもそうだな、猫がしゃべると思わないだろう?その・・・ねこさんという名はNGだ。ちびと呼んでくれ」
一人と一匹は爆笑した、私はこの猫似つかわしくないちびと言う名に、ねこさんは照れ笑い。
不思議なことに私は猫がしゃべることに対し、何の疑問もいだかなくなっていた。
私はちびが無心にお刺身を食べれるのをみて今持ってる悲しい気持ちがどこかに飛んで行ったのも気づかなくなっていた。
「何かはなしたいことがあったんだろ?この見知らない猫相手でも、何でも聞いてやるよ、前にこの家にいた白猫には世話になったこともあるし・・・実は今だから言うがお前のとこの白猫とは深い中だった<昔・・・」
「昔?」
「ははは、忘れてくれそのことは・・・それより、おまえはよく泣くなぁ、いったい何が悲しいんだ?」
「失恋したのよ<私」
「何回目の失恋だ?その男がはじめてと言うわけでもないんだろ?どこまで言ってたんだ・・・その・・・どういったらいいかよくわからないが・・・」
「・・・何度目の失恋と言われても・・・とにかく、彼は私を選ばなかっただけ・・・」
「優しくない男だったのか?」
「ネットで知り合い、オフ会に行って付き合ってくれと言われて、3日後私じゃない人を恋人ができたとネットの日記に書いてた」
「お前はあまり自分をかまわないんではないのか?猫の俺が言うのもなんだが女っぽくない・・・その。。。中性っぽい魅力はあが・・・(汗)」
「いいのよ、ちび。あの人は妖しい魅力があったけど、私にはにあわなかったんだろうね」
「そうかもだ、こんなことうそ臭くなるが男はやつひとりではないし(汗)」
「そうだよね、でもそんなせりふ吐けるちびって、よくもてたの?」
ちびは笑いながら、
「俺たちの世界は今会っても、明日はもういないとか言う世界だから、そいつだけを思ってたら生きていけない。今そばにいるやつに恋しないと、それに、お前は失恋したと言って酒飲んでこもってると太るぜ(笑)さあ、おなかもいっぱいになったし、散歩に行こうよ、予定はないんだろ?」
「行こう、でも屋根とかはよしてね、私はいけないから」
「ついて来な」
私はドアに鍵をかけるとちびのあとについて歩いて行った。とにかく、ちびについていこうまだ寒いが春風が心地よい





2005年05月01日(日)



 

(2)
「今日はありがとう、またな」
ちびは私を広い近くの公園をぐるっと一周させて私を家まで送って帰って行った。
久しぶりだこんなに歩いたのは、日差しが新鮮だった、芝生の上に寝転がるのも何年ぶりだろう。
とにかくしゃべる猫との出会いは、失恋のことなんか心のどこにしまったか忘れるほどの出来事だった。
「馬鹿だと思われるから俺のことはしゃべるんじゃないぜ」
とか何とか言って帰って行った大きい身体だが名前はちびと言う猫。

熱を測ってみた、これは現実?
実際、私は杖もマントもホグワーツ魔法魔術学校からシーリングワックスで封蠟された入学案内の来たハリーポッターではないが猫語がわかる。
猫が私の言葉がわかるといったほうがいいのか、どっちにしても未知との遭遇であった、だから日記に書いておこう。

春の少し長くなった日が西にかた向く頃になっても、あの興奮は冷めやらず、食事を作る気にも食べる気にもならなかった。
昨日から、あの失恋騒動から何にも食べていなかった。
買ってあったお刺身はちびにあげたし。
とにかく珈琲でも入れよう、母は入院中で私しか家にいなく食事を作らなくても文句を言う者もいない。

珈琲を片手にPCを立ち上げる、Vistaは私に挑戦するかのように早く立ち上がる。
いつものチャットいつものHPを覗く、ラブラブの日記が書かれていた。
いいもんね、私も一応男の友猫(謎)ちびができたから(笑)

そのときメールが来た、例の男からだった。
彼女があまり強引に交際を迫ったので・・・と言ういいわけが書かれていた。
今でも私を好きらしい、私はもうなんとも思ってなかったが。
返信する気にもなれずメールを削除、受信拒否リストに入れた。
リアル知り合いではなかったのでもういいんではないかと。

夜になるとPCを切ってTVを見ていた。
窓の外で猫の鳴き声が・・・
私は窓から覗いてみると、ちびがいた。
「おなか空いたの?今から散歩はいやだよ、怖いやん夜の公園」
「集会に行かないか?」
「集会?」
「猫の集会だ。招待しようと思って」
「私は人間だけど・・・」
「長老がいいと言うから」
「今からなの?」
「いや夜中の25時に迎えに来るから」
「うん、連れてって」
「じゃあまた、あとで」
私は今夜25時に猫の集会に行く予定が入った(苦笑)
で、何を着て行けばいいんだろうか?私はカジュアルなものしか持っていない。

とにかくご飯を食べた、猫の集会で食べ物を出されたら困るから(苦笑)

いつもチャットが佳境に入る午前1時、私はコートを羽織ってちびを待っていた。

「いくぞ」
にゃーんではなかった(笑)
私は外に出て鍵をかけた。
ちびは後ろを何度か振り向きながら走っていく。
月明かりだけの真夜中、後で思うとなぜ怖くなかったのか、今でもそれはわからない。
多くの猫が守ってくれてたのか、知らない道を全速力で走った。
障害物はなにもなかった。

何分走ったかわからない、ちびがいきなり止まった。
そこはどこなんだろう、昼間ならわかるかもしれないが今はわからない所だった。
「着いたよ」
そこには猫の集団があった、でも怖くはなかった、見知った猫がたくさんいたから。

「長老が呼んでおられる」
ちびでも敬語を使う相手がいるんだ、そう思いながら言われるままに集団から少しはなれたところに行った。
「はじめまして・・・ではないよね。。。」
私は長老と呼ばれてる猫の顔を見てそういった・
「ちゃっちゅやね?、会いたかった・・・どこに行ったかと思った」
私は猫には長老と言われてる、私がちゃっちゅと名づけた猫を抱いてしまった。
「確かに、ちゃっちゅだが・・・ここでは長老なので・・・はなれてくれないか」
「ごめんね、懐かしくて・・・」

私はちゃっちゅを地面に下ろした。
「よく来てくれてありがとう、今はちびを可愛がってくれてるんやね」
「私が遊んでもらってるような」
「猫の集会にようこそ、この集会は満月の夜行われる、情報交換をしたり、簡単に言えばまあ仲良くやりましょうという宴会のような・・・」
「長老メールです」
「わかった、またあとで。悪いね席をはずす」
ちゃっちゅはどこからに走っていった。

「メールですって?」
「そうだ、珍しくもない」
ちびは続けた。
「テレパシーを使えなくなった猫には与えられる、猫ホーダイだからお金はかからない(笑)」
「で、どうかしたの?ち、長老があわててる」
ちゃっちゅは肉球でキーを押し続けている、それもかなり長い時間。

「今日はおもてなしもできなくなりましたから、お帰りになっていただきたいと長老がおっしゃってます」
ちゃっちゅを一回り小さくしたような猫が伝えに来た。

「わかった、送っていくとお伝えしてくれ」
「はい、お伝えします」

気がつくと猫の集団はいつの間にかなくなっていた。

「何が起こったの?」
「今は話せない、送るから」
「わかった」

行く道を走ったように私とちびは飛ぶように走って家についた。

「お休み、またな」
ちびはそれだけ言うと走り去った。

何があったの?
私がそれを問う前にちびは私の視界から消えていた、まるで闇解けたように。

私はベッドに横になった、いつもなら薬を飲んでもかなりの時間眠れないのにその夜はすぐに眠ってしまった。













2007年03月04日(日)



 

(3)
平日は仕事と母の病室に行ったらもう時間はなくなる、だからちびとも会えない。
昼間には家にいられるほど裕福でない私は週末の二日をちびを相手にすごすことが多くなる。

ある金曜の夜、それもかなり遅くに猫の鳴き声がした。
風呂上りの私は塗れた髪をタオルで拭きながらドアを開けた。

そこには掌サイズの子猫と同じ色同じ顔の半年くらい大きい猫がちょこんと座っていた。

「可愛いね、兄弟かな」
ちびと付き合う(謎)になってからなぜか野良猫が私を警戒しないような気がするのだった。
「とにかく、中に入って」
私は2匹を家に上げた。
「おなかが空いてるのかな?」
「実はちびの紹介んなんですが、この子を預かっていただきたいのです。」
いきなりこの猫も人の言葉で言った。
「捨て猫にしては綺麗だしどうしたの?」
「わけはちびがあさってに迎えに来たときお話します。どうかよろしくです」
大きいほうの猫は猫すわりをして頭を下げた。
「あなたはいいの?」
「僕は用(謎)がありますので、この子をお願いします。ごはん食べれます、おしっこのしつけもしてあります。寂しがりなのでよろしくです」
何度も振り返りながら大きいほうの猫は闇の中に。
「名前を聞くの忘れた、どうしよう・・・」
クッションの上で眠ってた子猫が目を覚ました。
知ってるものがいないためかミューミュー泣き出した。
「おいで、お膝の上に、抱っこしてあげるから・・・」
なおもミューミュー言いながら子猫は私に抱かれた。

しばらくして子猫は口を開いた。
「すみません、驚かれたことでしょう、私はTHE CATとちびの子供です。つれてきてくれたのは兄、THE CATとは猫の長の称号、今の長は私の母、通称ちゃっちゅと言う名前です。あなたに名づけられた。」
「子猫ちゃんのお名前は?」
「THE CATになる猫は名前をつけないんです。だから、名前はありません」
「じゃあちゃっちゅに名前をつけたのは悪かったのね?」
「いいんですよ、母も気に入ってたし^^」
「あなたの名前を2日間だけの名前つけていいかな?」
「もちろん、こちらに預けるのは母と父の希望でしたし。」
「何があったの?」
「くわしいことは私も知りません、ただ、THE CATに呼び出しがかかったことだけはいえます。だから次期THE CATの私を隠したんです」
「危ないことをしてるの?」
「それが契約ですから、国家機密組織と我々の。」
子猫は子猫でないこえで話した、若き王者の貫禄で。
「THE CATが死ぬなら次期THE CATはそのために生きていないといけないと」
「悲しい定めなのね、今日だけは私に甘えなさい、お母さんじゃないけど」
「母も父も、貴女にはおせわを受けたんだと言ってました。たとえ一日でもいいからあなたの元においてもらえと」
小さいのにこのこは運命を受け入れてる、このむとこのまざるにかかわらず自分に課せられる運命。
普通の子猫ならまだ母猫にくっついてるところ、母のぬくもりと愛撫にわが身をまかせ、一番幸せな時間を過ごしてるはずの時期にこの子はもう運命のふちにたってるのだ。 
無心に私の手の中でごろごろ言ってた猫がきっとした顔をして言った。
「ここにも刺客がくるかもしれません、私は自分を守るすべを伝授されました、だから心配要りませんから」
「どんなものが来るの・」
「同属の裏切り者、その他動物、人間、魑魅魍魎なんかも・・・」
「一緒に頑張りましょう、ちゃっちゅとちびの子なら。私も頑張る」
「でも、今日は一緒に寝てくださいね、ままがいないから・・・」
白い毛糸球のような猫は私にしがみついて眠った。



2007年03月05日(月)
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